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そもそも柚希とあの三人はカテゴリが違うのだから警戒も何もって話なのよ。
だからその触るとかってのも、友達としての触れ合い?程度なら別に構わんよって感じ。

あまり真面目に答えても変な空気になりそうだったから軽い感じで「うん、別にいいけど?」と答えたらくしゃくしゃっと頭を撫でられた。

やっぱり俺が懐く相手は俺の性質をよく理解していらっしゃる。


「なんか嬉しそうに見えるんだけど気のせい?」

「じゃないね」

「…頭撫でられんの好きなの?」

「うん、好き」


即答したら柚希は一瞬目を丸くして、それからふはっと吹き出すようにして笑った。
頭なでなでを継続させながら「それは卑怯だわ」と言ってくる柚希に「何が?」と返すとまた笑われる。


「何でもしてあげたくなる」

「え、最高。いっぱい可愛がってね?」


調子に乗ってぶりっ子すると柚希は「言ったな?」と言って不敵な笑みを見せた。


「餌付けする気満々だけど良いの?」

「最高。でも高いヤツは申し訳なくなるから安いお菓子にして?」

「ははっ。ちゃんと要求はするんだ?」

「だって餌付けって言ったじゃん。俺専用の餌付け師になるって言ったじゃん」

「ん、分かった。良いよ」


そこまでは言ってないのに俺の無茶な要求を快諾してくれた柚希は神様だと思う。

一緒にゲーム出来て、俺のテキトーな話にも笑って対応してくれて、優しくて、イケメンで、頭撫でてくれて、甘い物までくれるってさ。
控え目に言っても神じゃない?それ以下にはならなくない?


「てかそれってさ、また俺と遊んでくれるってことだよね?ね?」

「うん。俺はそうしたいけど、詩音は?」

「喜んで」

「ふっ。じゃあ連絡先交換しよ」


あ、そう言えばしてなかったんだっけ。
なんかもう今日初めて会ったって感じがしないから連絡先なんてとっくに交換してるつもりでいたわ。

初対面で連絡先交換するよりも先にちゅーしちゃってたとか信じらんないわマジで。忘れよ。


「俺、連絡とか全然まめじゃない人間だからなんか無視されてんなーって思ったらチャット飛ばしてねん」

「最初からそっちにした方が早そう」

「かも知れません」


そっちの方が確認する頻度は圧倒的に多いし確実に無視することはないと思われる。

と言っても俺だって一日中ゲームしてる訳じゃないからな。
ずっと気付かないってことは流石にないし、返そうと言う気になれば連絡だって返すよ。
朝届いてた尊さんからの連絡には返してないけど。


その後、お昼ご飯をどうするかって話になって。
そもそもの目的はカラオケじゃなくて俺の相談に乗って貰うことだったから、お昼は外に出て食べようかと言うことになった。

1時間振りに出た外の世界はより暑さが増していたから発狂するかと思ったよね。

その中を長時間歩くのは不可能そうだったら近場にあったファストフード店でちゃちゃっとお昼を済ませて、これまた近くにあったショッピングモールで一休みすることになった。


「ごめん、そこまで暑さに弱いとは思ってなかった」

「いやいや、俺が貧弱なのがよろしくないのですよ。日々おうちにこもってるからね」


ちょっとは外に出て運動でもしたらマシになるのかも知れないけど、まあそんなことする訳ないよね。
別に暑さに強くなる必要なんてないから家の中で過ごさせてくれってなっちゃうよね。

そんなだから、せめてもの役割として荷物番を任されたところもあるんだけど。


「何か飲み物買ってくるよ。何が良い?」

「それは流石に自分で買います」

「良いってそれくらい。心配だからここで休んでて」


とか言ってマジで心配そうな顔するから一瞬柚希のことを彼氏だと錯覚してしまったよね。
相当暑さにやられちゃってるっぽいわ。

近くに自販機ないかなって見渡してみたけど見つからなかったから、代わりに目に入ったジューススタンドを指差して「じゃああそこのオレンジジュースで」とお願いさせて貰った。
「了解。待ってて」と言ってスタスタ歩いて行ってしまった柚希はマジで出来る男だと思う。

そう言えば訊いてなかったけど彼女とかいんのかな。
いるか。いるよなどう考えても。寧ろいて欲しいわ。
彼女のこと幸せにしてあげて欲しいとかって謎の感情が生まれてるわ俺。

美男美女が並ぶ姿を勝手に想像してにやついていたら、戻って来た柚希の手には俺が頼んだオレンジジュースともう一つ同じような色の別のジュースが持たれていた。


「はい。こっちがオレンジ」

「ありがとう。柚希のは何?」

「マンゴーソーダ。俺のって言うか、詩音が炭酸の方が良いってなったらこっち渡そうと思って買っといた」


「暑い時って炭酸系飲みたくならない?」と言う投げ掛けに「なる」と答えたけど、残念ながら声には出せなかった。
と言うか出なかった。ビックリしちゃって。


「どっちが良い?どっちも飲んでも良いけど」

「いや、あの、すいません柚希さん。優しさの供給過多って感じなんで減らして貰っちゃっていいですよ」

「え?ああ、別にそんなんじゃないって言うか、やりたくてやってるだけだから」

「にしてもじゃん。買ってきて貰ってる段階でこっちとしてはもうMAXありがとうなのよ」

「だから気にしなくて良いって。とりあえず詩音はそっち飲む?俺はこっち飲むけど欲しくなったら言って」


なんてことを言われてしまったらさ。
俺って柚希の彼女だったっけ?って思ってしまうよね。


「ねえもう彼女じゃん俺、柚希の彼女じゃん?本物の彼女さんごめんなさいって感じなんだけど」

「いや、彼女いないし」

「えっ」


衝撃の事実を告白した後に「あ、詩音が彼女か」と言って悪戯っぽく笑った柚希を見て俺はもうこいつになら弄ばれてもいいと思った。
下らないノリも柚希が言うと嫌な感じがしないからイケメンってブランドはすごい。


「イケメンは美女と付き合ってろよ」

「何それ嫉妬してる?」

「嫉妬じゃなくて不満だよ。俺はもう柚希と柚希の彼女の幸せを応援するポジションを確保してんだよ」

「自分のこと応援してんの?」

「あ、一回その設定忘れてくれていいです。あと俺は男だからもしそうだったとしても”彼氏”な」

「じゃあ彼氏」


いや、じゃあ彼氏は最早意味不明なのよ。

あと俺と話しながらしれっとジュース飲むの止めような?
すげー美味しそうだからな?


「あ、こっちのオレンジも美味しいです」

「も?」

「マンゴーは飲まなくても美味しいに決まってるから」

「好きなの?」

「大好き」

「じゃあ、はい」


飲んでいいよって顔をしてストローを差し出してきた柚希に「間接キスになるけどいいの?」と訊きかけて止めた。
気にするなら差し出してこないよな、と思ってそのまま一口だけ貰うとお口の中に爽快な南国が広がった。

爽快な南国って何。


「美味」

「交換する?」

「ううん。こっちでいい」


でも後でまた貰うと欲張ってしまったせいで柚希は俺に配慮しながらジュースを飲む羽目になった。
俺がそれに気付いたのもちょっと経ってからだったけど、柚希っていい奴過ぎてやっぱりちょっとむず痒くなるわ。




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