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11 ※



吐き出していないんだから俺が蓮のソレを飲み込んだことは奴も分かっているだろう。

まあ、だからそんな顔をしているんだろうけど。


「……怒ってんの?」

「いや、……だって……ホントに飲む…?」


半分は絶頂後の余韻に浸っているような様子で気怠げな声と溜息を零す蓮に、本当も何も、と心の中で思う。
俺はそうすると言っていたし、そうする為にしたようなものでもある。


「良いだろ別に。俺がやりたくてやったんだから。それより、気持ち良かった?」


今度はわざとらしく訊ねてやると、意外にも惚けたような顔で「…うん、すごく」と返ってきたのでこっちが恥ずかしくなった。
「あ、そう…」と言った俺に向かって奴の手が伸びてくる。


「信じられないくらい気持ち良かった」


俺の頬を撫でながら蕩けた声を出す奴から思わず目を逸らしてしまう。
その反応を見て奴がふっと笑う。


「天国ってこんな場所なんだろうなって、思った」

「いや、それは流石に…言い過ぎ…」

「全然、言い過ぎじゃないよ。だって俺、フェラされてイったの初めてだし」

「…えっ!?」


逸らしていた視線を勢いよく戻すとにこりと笑う蓮と目が合った。

さっきも考えていたけど俺は決して上手い訳ではない。
自ら豪語することではないがそれは事実だ。
だからそんなことを言われても俄かに信じがたい。


「ああ、そんなに経験がある訳でもないけどね?」

「っ……童貞、では…」

「ない、ね。残念ながら」

「ッ………」


まあ、そうじゃないだろうとは思っていたけども。

「くそっ…」と毒を吐き出した俺に蓮が苦笑する。
どいつもこいつも成人する前に卒業しやがって、この野郎。


「…あ?あれ?」

「どうしたの?」

「いや、……変なこと訊いていい?」

「え、今度は何?」

「蓮ってさ、……最後にヤったの、いつ?」


そう訊ねると、奴の眉間に皺が寄った。

だって、俺のことを好きになってから直ぐに当時付き合っていた彼女と別れたって言っていたから。
それ以降の期間に蓮が好きでもない誰かと行為に至るとは思えない。
と言うことは、少なくとも二年間は致していないのではないかと思う訳で。


「それを訊いてどうするの」

「どう……俺が安心、するか…しないか?」


そう答えると眉間の皺が益々深くなった。
別に悪いことは言ってないと思うんだけどな。


「ん、まあ、具体的な数字は言わなくても良いわ。俺を好きになってから誰かとヤったかどうかだけ答えてくれたら、それで」

「……そう言うことね」


そっと、俺よりも先に安心したように溜息を吐いた蓮が、その問いに答えることなく突然ベッドの上に膝立ちになった。
何だ?と思っている間に脇の下に手を差し込まれ、ぐいっと持ち上げられた身体を直ぐさまベットの上に沈められた。
再び押し倒された状態になり、驚いてパチパチと瞬きを繰り返すだけの俺に奴が言葉を降らせる。


「二年以上ヤってなかったら童貞も同然だって言われるのかと思った」

「…えっ?いやっ、そうじゃなくて」

「うん、さっきので違うって分かった。でもまあ、それが答えだよ」


それが、答え…

そうか。
じゃあ、俺の考えていた通り、蓮はずっと。


「何で紘夢くんが嬉しそうな顔してるの」

「分かんないけど、でも、安心はした」

「俺が松尾みたいな人間じゃなくて?あ、ごめん、余計なこと言っちゃった」

「……わざとだろ」


呆れて溜息を吐く俺に奴が頬を綻ばせてうんと頷く。

別に俺は、湊人がしていたことに関しては特に何も思っていない。
俺達は付き合っていた訳じゃないんだし、あれだけモテていたんだから誰ともそう言うことをしていなかったと言う方が信じられない。

だからって、今みたいな言い方をされると流石にちょっとむすっとしてしまうけどな。


「お前、湊人に相当恨みがあるみたいだな」

「そりゃあ、ね。俺達の恋路を阻んでた張本人だから」

「ふうん?でも湊人がいなかったら俺のことなんか見つけられてなかったと思うけど」


そもそも蓮が俺の存在を知ったのは湊人を通じてだ。
湊人がいなければ俺は蓮の目に留まることもなかった。

けれど蓮は、直ぐさまそれを否定した。


「出逢い方は違ってたかも知れないけど、それでも俺は紘夢くんを見つけてたと思う」

「…ふうん」

「本当に。だって、こんなに好きになれる人、一生の内に一人しかいないだろうから」


穏やかな声で紡がれた言葉に、俺は不覚にも泣きそうになった。
そんな俺の頬を優しく撫でながら、蓮がその先の言葉を紡ぐ。


「でも確かに、きっかけを作ってくれたのは松尾に違いないんだろうから、本当はあいつに感謝しないといけないんだろうね」

「……まあ、それは……そう思ってるだけで…良いんじゃねえの…」

「かな。あいつも急に俺から御礼なんて言われても困るか。困るって言うか、気持ち悪いなって言われそう」

「…言いそう」

「ね。でも、報告くらいはさせて貰っても良いよね?俺が紘夢くんと、…」


不自然に途切れた言葉の続き。
どうしたのかと見上げると、蓮は真剣な表情をしていた。


「…蓮が、俺と…何?」

「いや、………紘夢くんが、俺のものにもなったよ、って」


それだけは報告してやりたい。
そう言った蓮からは冗談っぽさも意地の悪さも感じられなかった。


「…好きにしたら、良いんじゃない?…まだ、完全に蓮のものにはなってないけど」

「……うん。だから、今からするね」


そう言って少しの緊張を残したまま微笑んだ蓮が、同じように緊張し始めた俺に軽い口付けを落とす。
そこから先は多くの言葉は要らなかった。

次第に口付けを深めていきながら、伸びてきた奴の手が俺のソレを握る。
優しく扱きながら、段々と口付けを落とす唇も下の方へと降りていく。
身体中にキスの雨を降らせながら、最終的に奴の唇が辿り着いた先は俺達が繋がることが出来る唯一の箇所だった。


「ッ、蓮っ」

「ここも、舐めて良い?」

「っいや、そこは…」

「嫌なの?」

「ッ………」


嫌と言うか、何と言うか…

返答に困っていたら、蓮が股の間から顔を覗かせて熱のこもった視線を投げてきた。


「紘夢くん、お風呂入った、よね?多分だけど、俺が来る前に」

「ッ!?…それは、……入った、けど…」

「入ったかどうかは俺は気にしないけど、でも、紘夢くんがそうしたってことは、こうされるかもって思ったから…じゃないの?」


図星だったから、何も言えなかった。

押し黙った俺を見て蓮も確信が持てたようで、もう一度同じことを訊いてきた奴の目には強制力にも似た力が込められていた。
だから頷くしかなかった、と言ったら、狡いのだろうか。

折り曲げた両膝を持ち上げられ、蓮の前に晒された秘部。
そこに奴の吐息が掛かる。
舐められる、そう身構えたせいで穴がヒクついたのが自分でも分かった。
「ヒクヒクしてる…」と囁いた奴の声も興奮で震えている。

それから、ぐい、と穴が拡げられた。
冷たい空気を吸いこんだソコに、蓮の熱い舌が触れる。


「っああ…!」


ビクッと暴れた下半身を抵抗出来ない程度の力で押さえ付けられ、舌が穴の縁をなぞるように動く。

例え洗っていたとしてもやっぱりソコは舐めるような所じゃない。
その気持ちはいつまでも消えてはくれないし、滑った舌の感触にも慣れることが出来ない。
でも、これが蓮と繋がる為の行為だと思えば、何とか気持ちを誤魔化すことは出来た。




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あきゅろす。
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