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それから、言われていた通り素股なるものを経験させられた俺はその行為の卑猥さと気持ち良さに驚いたと同時に、とんでもない事実を自覚してしまうことになった。

挿入の際に伴う痛みや圧迫感を感じずに擦れ合う性器から快感だけを得られるし、興奮もするからこれはこれでアリだとは思う。
でも、これだけだと足りないとも思ってしまった。
誠くんが興奮出来て気持ち良くなってくれることが目的だと思えば不満はないけれど、身体は正直に彼の熱を求めてしまう。

そう、俺は自分の身体が如何に男を受け入れることを望んでいるか。
そんな救いようのない事実を身をもって思い知らされてしまったのだ。


「っ……ッ……すいません、先にイって良いですか…っ」


射精の直前で体勢をバックから正常位に替えた誠くんが、自らの手で性器を扱いて迸る液体を俺の太腿に吐き出した。
その光景を彼は恍惚の眼差しで見つめながら、掬ったその液体を俺の性器に擦り付け、その滑りを利用して激しく手を上下に動かす。
導かれるままに俺も直ぐに射精をし、混ざり合った二人分の精液で俺の身体が汚された。

仰向けに寝転んだまま茫然とする俺を暫くの間彼も同じようにどこかへ意識を飛ばしたみたいな表情でじっと見つめていた。
ふと我に返った彼がベッドサイドに置かれていたティッシュを数枚取って俺の身体を汚す液体を拭き取る。

その様子を俺は黙って見ていることしか出来なかった。
一刻も早く行為が終わった状況を整えて貰わなければ、身体の奥で燻ぶっている熱が暴れ出してしまうかも知れなかったから。

お互いの身体をざっと綺麗にし終えた誠くんが俺の横に横たわり、労わるような手付きで俺の頬を撫でる。


「しんどいですか?」

「…ううん。大丈夫」

「…触らない方が良いですか?」


多分誠くんは俺が賢者タイムに入っていると思ったからそんな風に訊いてきたんだろうけど俺にはそんな時間は訪れない。
誠くんも多分同じで、それどころか射精後にそんな感じになっていた人は一人もいなかった気がする。

ある意味では触られない方が自分の為かなと思いつつ、触れていたい気持ちの方が勝って返事の代わりに彼の胸に頬を寄せた。
直ぐに抱き締め返してくれた腕の温もりと、とくとくと聞こえる心臓の穏やかな音を聞いたら幾らか気持ちが落ち着いたようだ。


「誠くん」

「はい」

「明日もいっぱい触ってね」

「………葉太さん」

「うん?」

「明日もいっぱいシて良いですか」

「っ……」


誠くんの体温に安心して、明日も一緒にいられるんだからと思ったら嬉しくなってそんなことを言った俺に彼がずるい返しをしてきた。
込み上げる想いをどうしたら良いか分からなくて、目の前の身体にぎゅっと抱き着く。


「…シて。いっぱい。俺もそれが良い」

「あー、ヤバい。ヤバいです。滅茶苦茶ニヤける」


そんな台詞が聞こえたから顔を上げたら確かに誠くんは笑っていた。
でも本当にそれでニヤけているんだとしたら何でそんな表情まで格好良いのかが分からない。


「誠くんって人前でニヤけたりしなさそうだよね」

「そうですね。そもそもニヤけるようなことがないです。葉太さんが絡んでる時だけかも知れません」

「…俺もそう言うことさらっと言えるようになりたい」

「駄目です。覚えたら俺以外の人にも使いますよね?駄目です」

「……可愛い」

「今何か言いました?」


やっぱり誠くんに可愛いはNGらしい。

ふふっと笑ったらわざとらしく拗ねたような顔をした彼にキスをされた。
最初は咎めるみたいな空気を纏っていたのに段々と甘さを含んでいくキスに身も心も蕩けてしまう。


「好きです…葉太さん…」

「んっ……誠くん…」


重なりが深まる程にお互いに離れ難くなって、その後もくっ付いたままお風呂場に向かい一緒にシャワーを浴びた。
隙があればキスをして触れ合って、ベッドに戻ってからもキスをしながら抱き締めてくる誠くんにもう何度目か分からない”好き”の言葉を口にする。


「このままずっと一緒にいたいです」

「…明日…って言うかもう今日だけど、夜までずっと一緒だよ…?」

「それじゃ全然足りません。明日も明後日も、毎日会いたいです」

「っ…そんなこと言わないでよ。そんな風に言われたら俺…」


帰りたくなくなっちゃう…と小声で漏らすと、無言で痛いくらいに抱き締められた。
その反応を見た後になって、今のは言わない方が良かったんだと気付く。

言っても辛くなるだけだ。
俺だってこんな気持ちになることくらい分かっていた癖に、軽率な発言をしてしまった。
ただ、これが本当の別れ際ではなかったのがせめてもの救いだったのかも知れない。


「変なこと言ってごめん」

「…俺の方こそ、調子に乗りました。すいません」

「ううん。帰るまで、ずっと一緒だからね」

「はい。…あの、このまま抱き締めて寝ても良いですか…?」

「え?うん。あ、でも、服着ないの…?」

「え?…着るんですか?」


着ないのが当たり前みたいに言われたからそんな質問をした俺の方が可笑しかったのかも知れないと思ってしまった。
そんなことないよなぁと思いつつも「良いです、着なくて…」と返すと誠くんがクスクスと笑い始める。


「たまに出る葉太さんの敬語、結構好きです」

「え……何で?」

「可愛いから」

「…ごめん。よく分からない」

「分からなくて良いですよ。でも可愛い」


そう言ってまたぎゅうっと抱き締めてきた彼に苦笑が漏れる。
色んな人から言われ過ぎたせいで俺もその言葉を当たり前のように受け入れてしまっていたけど、改めて考えると俺の何が可愛いのか自分では全く理解出来ない。

たまに敬語になるのが可愛いってどう言う感情なんだろう。
逆で考えたら……ああ、よく分かるかも知れない。


「誠くんもたまにタメ口になる時あるけど、確かに可愛いかも」

「葉太さんのそれと俺が言ってる可愛いは種類が違うので一緒だと思わないでください」

「え、何で。一緒だよ。一緒でしょ?」

「違いますって。俺のこと食べたいくらい可愛いとは思ってないですよね?」

「思う訳ないよ!」


即答したら「そう言うことですよ」と言われて渋々納得した。

種類が違う、と言うのは何となく理解出来た。
でもそれがどう言う種類の感情なのかはやっぱり理解出来ない。
前にも別の人に同じことを言われたような気がするけど、そんな感情共通するもんなんだろうか?


「誠くんは俺のこと食べたいと思ってるの?」

「思ってます」

「えっ、怖いよ。食べないで」

「葉太さん。いい加減にしてください」

「…えっ?」

「可愛いにも程があります。そんなことばかり言ってるとマジで食べますよ」


いや、マジで食べるってどう言う意味だ。
言葉通りの意味だとしたら怖過ぎるんだけど。

なんて考えながら逃げるように「おやすみ」と言ったらすかさず顔を持ち上げられた。
むっとしてるのかしゅんとしているのか、その中間の顔をした誠くんが「冗談に決まってるじゃないですか」と言ってきたから可笑しくて笑ってしまう。
可愛いと言いたくなったけど、また怒られてしまいそうだから代わりに「好き」と言ってキスをした。
それに一瞬驚きの表情を見せた彼が、ふっと微笑みながらお返しのキスをしてくる。


「こんなことしてたら寝られませんね」

「ん、だね。そろそろ寝よっか」

「そう、ですね」


そんなやり取りをしながらキスを止めようとしない俺達は傍から見たらさぞかし浮かれたカップルなんだろう。
それも間違いじゃないし、今は誰の目も気にしなくて良いんだから俺達が何をしていたって自由だと思った。

せめてこの部屋にいる間は、そんな風に過ごさせて欲しい…と。




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あきゅろす。
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