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「十年間、人生かけてやってきた俳優の道を捨てようとしたくらいですよ。それがどれだけ重い気持ちか、本当にそうしないと分かって貰えないんですか?」

「ッ!ご、ごめん…そうじゃ…ないけど…」

「俺の貴方に対する気持ちの大きさは、貴方が想像している十倍はあると思ってください」

「じゅ、十倍…」

「はい。それでもまだ足りないくらいかも知れません」


それでも足りないくらいって、一体どれだけの想いなのか。
今の俺には想像がつかないけれど、それはこれから誠くん自身が時間を掛けてしっかりと伝えてくれるらしい。

そうして貰っている間に俺の気持ちも彼に追いつくことが出来るのだろうか。
いや、絶対に追いつきたいと思った。
同じくらい好き、が一番幸せに決まってる。


「俺も誠くんのこと、これからもっと好きになるからね…っ」

「何ですかそれ、ヤバいんですけど。可愛過ぎ」

「っ…誠くんの笑顔も、ヤバいから。格好良過ぎて、溶けそう」


真面目な顔をしてそう言った俺に彼はこれ以上ないくらいの甘い表情を見せてくれた。

溶けるって言ってるのにそんな表情を向けないで欲しい。
いや、うそ、溶けても良いからもっと見ていたい。

俺がそんな馬鹿なことを考えているのが少しでも伝わったのか、唇にちゅっと軽いキスをした彼が「じゃあマジで溶かしちゃいますね」と囁いた。

やっぱり誠くんは、何を言っても何をしても、口惜しいくらい様になる。


「顔、真っ赤ですよ」

「っ……」

「でも、顔よりこっちの方が真っ赤になるかも」


そう言って胸元に顔を埋めた彼が伸ばした舌で突起をべろりと舐め上げた。
指で与えられる刺激よりも生々しい感触に、媚びるような甘ったれた声が漏れる。


「ふ。好きですね、これ。こうやって舐めた後に…今度は少しだけ噛んで、」

「あッ!っん、う…ッ」

「…ちょっとヒリヒリしてるとこを、また優しく舐めて…」

「やっ、あぁっ…あ…」

「ん…、これを何回も繰り返してあげたら、初めてでもちゃんと感じられてましたよね」

「ッ…!」


彼の言葉を聞いてその時の光景が頭の中に広がる。
その時に自分が感じたものは勿論、誠くんがどんな顔をしていたか、何をされて何を言われたか。
俺はその全てを鮮明に覚えている。

その時俺が胸に抱いた感覚が何だったか。
今なら簡単に分かるのに、どうしてあの時の俺はそれに気付かずに目を逸らしてしまったんだろう。
それが悔しい。悔しいけど、俺以上に悔しいのは誠くんだから、彼にそんなことは言えない。

だから代わりに、好きだと伝える。
誠くんがしてくれることが気持ち良いと、俺が感じたことは全て言葉にして伝えたい。


「誠くんだったから、ちゃんと感じたんだよ…っ…誠くんじゃなかったら、怖いだけだった…っ」

「…まだ殆ど何も出来てない状態で煽らないでくださいよ。そんなこと言われたら普通に我慢出来なくなります」

「しなくて良いよっ…俺も早く誠くんの、挿れて欲しいと思ってる…っ」

「ッ…まだ駄目です。挿れるだけとか、そんな抱き方したくない」


それは彼の紛れもない本心のようだ。
再び胸に顔を埋めた彼が片方の突起を口に含み、もう片方を指で引っ張る。
一つ一つの動作がどうかではなく、ちゃんと順序を踏んで行為を進めていく丁寧なやり方で俺を抱こうとしてくれている彼が、泣きたくなるくらいに好きだと思った。


「結構強く引っ張ってますけど、本当にこれも気持ち良いんですか?」

「あ、いいっ、気持ちい…っ」

「へえ。でも、毎回こんな風に苛めてたら、その内服に擦れるだけでも感じるようになるんじゃないですかね」

「えぇっ?…ッ、そんなっ…んんッ」

「そしたら困りますね。撮影中にそんなことになったらどうします?葉太さん、我慢出来ないでしょ」

「あッ、うぅっ、やだっ、そんなこと…言わないでっ…!」

「何で、想像したら興奮するから?これ、この乳首が布に擦れて、他の人がいる前でどんどん硬くなっていくところを想像して興奮してるんですか?」


やだって言ってるのに、本当に想像させるようなことを言わないで欲しい。
想像なんてしたくないのに、 本当にそんなことが起きたら大変なのに。


「どうするつもりなんですか。このエロい乳首で感じてるやらしい顔、周りに見せるつもりですか?」

「やっやだっ、そんなのやだぁっ」

「じゃあちゃんと隠してくださいよ?こんなやらしい顔、他の人に見せたら許しませんからね」

「んっ…見せないっ!見せないからぁっ」


もしそうなった時の話をしているだけなのに。
もう既に起きてしまったかのように、俺を咎めるみたいな乱暴さで乳首を引っ張ったり爪の先で押し潰したりしてくるから頭が混乱してくる。
今は想像だけで済ませられるから興奮してしまうのかも知れないけど、それが実現してしまったら俺はもう働けなくなる気がする。


「マジで言ってますからね?共演者に食われたとか、そんなこと起きたら俺、そいつに何するか分かりませんから」

「ッだめ!そんなっ…だめだよ誠くんっ」

「駄目って言われても、葉太さん絶対逃げられないでしょう。ちょっとでも強引にこられたら流される癖に。イケメンなんてこの業界には山程いるじゃないですか」

「そんな…知らな、いっ…誠くんよりっ…かっこいい人なんかっ…いないっ」

「っ……」


そう主張したらパタリと刺激が止んだ。
ぐいっと顔を近付け見下ろしてくる瞳の奥がぐらぐらと煮えているように見えて、視線を通じてその熱が俺の身体にも伝わってくる。


「…俺それ本気にしますよ」

「い、いいよ…っ…本気で言ってるもんっ」


もうこの際俺が面食いかどうかはどうでも良い。
でも、今更どんなイケメンが現れたって流されないし好きになんかならない。
相手がこの業界の人間だったら尚更だ。
今度こそ俺はその人と誠くんを比べて見てしまうだろう。
その結果がどうかなんて、比べる前から分かりきっていることだ。


「誠くんが一番格好良い…っ…誠くんより格好良い俳優もモデルもいない…っ」

「ッ…、じゃあ、そうやって断ってくださいよ?誰よりも格好良い彼氏がいるから、あんたなんか興味ないって」

「っ、うん、分かった、そうする…っ」


躊躇いもなく頷くと切羽詰まった表情をした彼に唇を奪われた。


「んんっ…ふ、んっ…んぅ…」


痺れるくらいにキツく吸われた唇が僅かな痛みを訴える。

この唇も、乳首も、誠くんに舐められて、吸われて。
それが所有の印だと言わんばかりに赤く色付いて。

俺達にはそうすることしか許されないのなら。
例え痛みを伴ったとしても構わないから、もっと彼の証をこの身体に刻んで欲しいと思った。
その嫉妬も独占欲も、俺達に許される形で良いから、全部この身体に残して欲しい。


「誠くっ…もっと、もっと俺をっ…誠くんのものに、して…っ」


彼の腕に縋り付いてお願いすると、さっきよりも苦しそうな顔をした彼に頭を掻き抱かれた。
呼吸を止めるくらいの力で加減もなしに抱き締められて脳内がグラついてしまう。


「…もう無理です、限界です…俺もう、優しく出来ない…俺、葉太さんのこと…っ」

「ッ…優しく、しないで…っ…俺が、俺がそうして欲しい…どんなことしても良いから、立てなくなっても、死なないから…っ」


目に見える痕が残せないなら記憶に残すしかない。
それなら絶対に、消えないから。




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あきゅろす。
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