8 ※
「玲司さんの子どもなんか…絶対可愛いに、決まってるのに…っ」
「…何でそんなこと言うんだよ」
俺の発言をそのままの意味で解釈した玲司さんがきゅっと眉を寄せ、怒った態度を示しながら手淫を激しくする。
「ちがっ、違うんですっ」
「何が。要らないとまで言ったら流石に駄目かなって思って言わなかったのに。言わせんの?」
「だからっ、そうじゃなくて…っん、俺が、子どもに…ヤキモチ、妬きそうだから…っ」
「は?」
「俺より、絶対、可愛いからっ…だから俺っ…玲司さんの子どもは、産めないって…思って…っ」
言いたいことは大体合ってたと思うけど与えられる刺激のせいで文章が支離滅裂になった。
それでもその気持ちは玲司さんにもちゃんと伝わってくれたようだ。
何でそんなことを言うんだ、ともう一度同じ台詞を吐いた彼が怒ったような顔をしたまま、確実に射精を促す動きで手を動かす。
「お前の遺伝子入ってないみたいな言い方すんなよ。葉太の子どもでもあるだろ」
「あ、っぁあ…待って、くださっ」
「葉太の子どもなんか可愛いに決まってるけど、葉太より可愛いとかあり得ねえから。てか子どもなんか産ませる訳ないだろ…っ」
俺だって産まないって言ったし、そもそも産みたいと思ってもどうやったって産める筈もない。
だけどこの時の俺達はまるでその可能性があるかのような認識で、お互いに可笑しなことを言い合っていた。
「あっ、あ、玲司さっ…手っ、そんなしたら…っ」
「精子出る?」
「んっ、で、出るっ…精子、出ちゃい、ますっ…!」
「誰とも子ども作らないって約束出来るなら出しても良いよ」
「ぅっ…?…作、らない…っ…約束っ、します…ッ」
「じゃあ出して。俺の手ならいっぱい出して良いから。てか全部出し切れよ。そしたら心配いらないじゃん。なあ、だろ?」
だから全部出せ、と促す手の動きに導かれるがままに俺は直ぐ玲司さんの手の中に精を放った。
気持ちが昂っていたから解放感が凄かったけど、身体の熱は更に上昇した気がする。
可笑しな発言を平気でしてしまうくらい興奮していたからだろうか。
射精後の頭も全然クリアにはならず、寧ろさっきよりも思考が崩壊してしまっていた。
だってもう、玲司さんの精子が欲しいとしか考えられない。
「玲司さん…のは…?玲司さんの、精子は…くれないん、ですか…?」
「葉太が手でしてくれるってこと?それより早くこっちに挿れたい」
今俺が出したばかりの精液を肛門に塗りつけた彼が指の先をそこに押し込んだ。
ぬるりとした感覚と走った痛みにくぐもった声が漏れる。
でもそれは俺の望みでもあるから、痛みに耐えるようにぎゅっとシーツを掴む。
「そこに…出して、…っ…くれるん、ですか…?」
「直接は出さないって約束じゃん」
「ッ……じゃあ、口は?口で、飲んだら…」
「飲みたい?俺の精子」
ギラついた表情で問い掛けてきた彼に俺は飲みたいと即答した。
それに対する返答はなく、穴から指を抜いた彼がベッドから降りて俺を放置して玄関の方へと向かう。
突然の行動に驚いて声も出せないまま茫然としていたら、直ぐに戻って来た彼の手には彼が持ってきていた荷物が持たれていた。
玄関で抱き合っていた時から放置していたようだ。
ごそごそと荷物を漁っていた彼がその中から小さな箱とチューブ状の容器を取り出し、それを持ったまま俺の上に跨がる。
その箱がコンドームの箱だと言うことは分かった。
もう一つの方はハンドクリームだろうか。
そんな風に考えながらじいっと彼の手元を見つめていたら、その中身を指に出した彼が再びその指で肛門に触れた。
「こん中で出しまくった後の薄くなったヤツなら飲んでも良いよ」
「んッ……薄い…?」
「うん。濃いのはまた今度な」
今度なら良いってことは薄いのじゃないといけないって訳ではないのか。
そんなことを考えてみたけど、飲ませて貰えるなら薄くても何でも良いと思ったから頷いておいた。
それに、出しまくると言うことは何度もシてくれるってことだ。
そっちにも期待してしまうんだから、どう考えても俺の頭は正常じゃない。
「やっぱすげー狭い。葉太、力抜いて」
「ふっ…んん……わかん、ない…っ…」
「ん?俺のちんこ入んなくていーの?」
「やっ…!いやです…っ」
「だよな。嫌だよな。葉太も俺とセックスしたくてしたくて堪んないよな?」
「っあ…そっ…そう、です…っ…玲司さんとっ、セックス…したいぃ」
思ったままを返していただけだったけど、玲司さんと話していたお陰で気が逸れたのか、その隙に彼の指が奥へと侵入してきていた。
「一本入った」と言って満足そうな笑みを浮かべた彼が、その指を色んな角度で折り曲げながら内側を解していく。
「あっ……あんっ…」
「痛くない?」
「大丈夫、です…っ…ん、もっと…してもっ…」
痛みがないことを伝えると指の動きが大胆になった。
クリームを中に塗り込みながらぐりぐりと揉み解され、その気持ち良さに早くも腰が砕けそうになる。
「あっあ、玲司さっ…きもちっ……中っ、きもちいっ」
「そんなに?まだ指一本じゃん」
「でもっ、俺っ…んうっ…指だけで…イっちゃいそ、で…っ」
それくらい気持ち良いと言うことと気持ちが昂っていることを伝えたかった。
へえ…と低い相槌を打った彼が中に埋まる指をぐりん、ぐりんと大きく回転させながら「でもさあ、」と俺に投げ掛ける。
「中でイくのは前立腺弄ってやんないと無理だろ?まだそこでイかす気ないし。さっき一回射精したからちんこも暫く触ってやんない」
「えぇっ…何でっですかっ?」
「だって葉太、この前意識飛ばしちゃっただろ?またそうなったら寂しいじゃん。ちゃんと終わった後もいちゃいちゃしたい」
「ッ……」
そんな、そんなこと言うなんてずるい。ずる過ぎる。
俺もずっと玲司さんといちゃいちゃしていたいし、その為ならイくのだって我慢出来る。
それを伝えたら玲司さんは嬉しそうに目を細めて笑い、それから彼のモノを受け入れられる状態になるまでしっかりと確実に俺の中を解してくれた。
前立腺は避けるように弄られていたから絶頂感こそなかったけど、それでも十分過ぎるくらい気持ちが良くて、挿入の直前には既に息も絶え絶えになってしまっていた。
「玲司さっ、もうっ、もう入るっからっ…もう、中っ」
「ん、俺もそろそろ限界。挿れたら直ぐイくかも。それでも良い?」
「いいっ、いっぱい、イって…ほし…っ」
速い遅いは関係ないし何度だってイって貰いたい。
俺で気持ち良くなって貰えてると思うと嬉しくて堪らなくなるから。
俺の返答を聞いてから漸く服を脱いだ彼がコンドームの包みをピリッと破った。
立派に勃ち上がった彼のモノがその中に窮屈そうに収められる。
その先端が蕩けた穴に押し当てられた時、衝撃を怖れる気持ちより何より、玲司さんに対する感情が溢れ出して止まらなくなった。
ゆっくりと奥へと進んでくる熱を感じ取りながら、息継ぎの合間に彼の名を呼ぶ。
「苦しい…?」と言って労わるように頬を撫できた彼のその手を取ってぎゅっと握り締めた。
緩々と首を振りながら震える声で「うれしい…です…」と答えると、熱の塊が一気に俺の中を貫いた。
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