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好き過ぎて尊い、と言う言葉は玲司さんの為に存在するんじゃないかと言うくらいピッタリと俺の心情を表していた。

玲司さんは俺には尊い。
尊いけど、そう思ってしまうと、都合が悪いこともある。


「尊い、だと……キスも…出来なくなっちゃいます…」


神聖な存在だと思ってしまったら触れることすら躊躇ってしまう。
それだと、困る。

そんな俺の心情を汲み取ってくれた玲司さんが、もう少しで唇が触れてしまいそうな所まで顔を寄せ、艶やかに囁く。


「葉太は良いんだよ。俺に何をしても、何を求めても。葉太だけは」

「ッ!」

「二人の時は遠慮しなくて良いって言ってくれたよな?それ、お前もな。俺にも遠慮なんかすんなよ。葉太がちゃんと言葉にしてくれたら、俺はそれに全部応えるから」


そう言って口を閉じた彼は、俺からの言葉を待っているようだった。

そんなことを言われてしまったら俺はもう止まれなくなる。
一方的に与えられるだけじゃなくて、自らも求めることを覚えてしまったから。
そしてそれが例えようのないくらい幸せなことだと言うことを、俺はもう知ってしまっている。


「玲司さんの…全部が、欲しいです」


自分の耳に届いたその声は欲情を隠し切れずに震えていた。

熱を持った俺の頬をゆるりと撫でた彼が「あげるよ、全部」と囁いて、俺の唇に体温を移す。
触れた瞬間から火傷をするように熱かったその唇が、体温だけじゃなくて彼の激情をしっかりと伝えてくる。

気付けば俺は、少し前の噛み付くようなキスを求めてしまっていた。
「もっと…」と吐息を漏らした俺に応えた彼が、潜り込ませてきた舌で俺の口内を掻き回す。


「んっ……ぅ、んっ…ふぁ…っ」


好き勝手に動く舌を追うように俺も舌を差し出すと根本まで深く咥え込まれた。
唾液の滑りを使ってまるでフェラでもするかのように、吸い付いた唇で上下に扱くように動かされその卑猥さに頭がクラクラしてしまう。

飲み込み切れない唾液が早くも顎を伝い落ちると、玲司さんの舌がそれを追って垂れた唾液をべろりと舐め上げた。
皮膚に強く押し当てられた舌の感覚に声を上げながら身体を震わせると、玲司さんの口からも熱い息が吐き出される。


「なあ、全部あげるって言ったけど、俺も貰って良いよな?」

「え…、は、い……それは…」


勿論…と伝えるとその瞳の奥がぎらりと光った。
再び彼から放たれ始めた荒々しいオーラを感じ取って、緊張と期待で喉が上下する。


「いつも通りじゃないかも、って言っただろ。アレ、熱中症がどうとかじゃなくて、こっちの問題だから」


言いながら玲司さんがその腰を俺の太腿に押し付けてきた。
そこに当たるモノが何で、ソレがどうなっているか。
ハッキリと感じ取ってしまった感触に、俺の体温も一気に上昇してしまう。


「ライブ終わって、葉太のこと考えて…会いたい、声聴きたいって思って、我慢出来なくて」

「っん、…う、ぅ……っ」

「もうその段階から、こうなってた。ずっと」


ゆさゆさと腰を揺らす彼が、昂った熱の塊を俺の太腿に押し当てながら目元をどんどんと赤く染めていく。
その隙に服の裾から侵入してきた手が脇腹をなぞりながら胸まで辿り着き、真ん中の飾りをわざと避けるようにして平らな胸を揉まれる。


「電話して声聴いたら、あーもう駄目だなってなった。早く葉太とセックスしたくて、葉太ん中、俺のコレで滅茶苦茶に突きまくりたくて」

「ッ、う、…ぁ…」

「電話でもうそんななってたのに、来たら外で俺のこと待ってるし。最初から俺のこと全部受け入れてくれて、ちゃんと応えてもくれて」

「うぅ……玲司、さ…」


もどかしい刺激に身を捩りながら物足りない気持ちを彼の名を呼んで訴えると、彼の目が一層鋭く光った。
突然ぐりっ、と押し潰すように乳首を摘まれ、一瞬電気が走ったみたいな刺激を受けて背中がのけ反る。


「んあッ!?」

「ホントは、俺が甘えようと思ってた。甘えながら、葉太のことも可愛がってやろうと思ってたのに」

「ひぅっ…ッあ!いっ…!」

「何でだろ。何でか分かんねえけど、お前の顔見て、その声聴いたら、ただただ滅茶苦茶に犯したくなった」

「ッ!」


玲司さんから放たれる獰猛なオーラの正体は彼自身も把握出来ていないようだった。

ただただ滅茶苦茶に犯したい。
その理由が何であれ、彼にそうされることを俺が望んでしまうのは可笑しいことなんだろうか。

ずくんと疼いた欲望を抑え切れず、熱を帯びた表情で見上げる俺を見て玲司さんの目がすっと細められる。


「でもまさか、その前に葉太に告白されるとは思わなかったから。折角気持ちが落ち着きかけてたのに、今度は違う意味で頭が可笑しくなりそうになってる」

「っ……おか…しく…?」


俺の投げ掛けに小さく頷いた彼が、胸を弄っていた手を下へとずらしていって、指先を埋めるように後ろの窄まりをぐいっと押した。
衣服越しの感覚でも肌がぞわっと粟立って、期待で腰が揺らめく。


「駄目だって分かってんのに、今直ぐにでもここに捩じ込んで、奥に俺の精子出しまくって…、もういっそそれで孕めば良いのになって思ってる」

「ッ――!?」

「そんくらい、頭も身体も俺だけで満たしてやりたくて仕方なくなってんだよ」


葉太のせいだからな、と言って指の代わりにソコへ宛てがわれた彼のモノで突き上げを真似た動きをとられ、俺の劣情も激しく燃え上がってしまった。

駄目だと分かっていると言う言葉が余計に気持ちを煽るんだと気付いた。
その背徳感が欲望を刺激し、理性と本能の狭間で揺れ動く心が、この行為をより淫らで非道徳的なものだと脳に認識させてしまう。

ただ快感を追い求めるだけの行為だったら何も考えずに楽になれただろう。
そうじゃないから、身体を繋げることにさえも俺達の間にある障壁を実感させられ、もどかしい気持ちを胸に植え付けられる。

それを壊したいと言っている彼を、どうして俺は止めなければいけないのか。
あと一歩、何かの拍子で暴れ出してしまうかも知れない彼のその感情は、ただ俺を求めてくれているだけだと言うのに。

これが、この胸を締め付けるような苦痛が欲張りな俺に対する罰なんだとしたら。
このしがらみも含めて俺自身が選んだ道なんだと思わなければいけないんだろうか。
覚悟を決めると言ったのは俺だけれど、断ることもその内の一つなんだろうか。

それでも俺は、どうしても彼から逃げたくないと思ってしまう。


「…俺は……玲司さんになら、何をされても良いって…思ってます」


ただ流されるのではなく、拒むでもなく。
その気持ちに正面から立ち向かうことは許されないのだろうか。


「お…女の子じゃ、ないから……どうやっても…子どもは出来ないけど…」


直接玲司さんの顔を見ることは出来なかったけど、視界に映り込んでくる彼の表情がその発言のせいで唖然としてしまっていることは認識出来る。
でも、言い出したらもう止まれなかった。


「お腹壊すくらい…我慢出来ます……駄目だって言われたけど、前に中に出して貰った時は、何ともなかったし…それに俺…あの時、玲司さんのが俺の中で――」

「待った」


降ってきた制止の声と共に玲司さんの掌で口元を覆われた。
見上げた先、もう片方の手で目元を覆い隠す彼の頬は赤く染まってしまっていて、俺の心臓もとくんと脈打つ。


「それ以上は、俺がしんどい」


続けて吐かれた台詞の意味は、彼のその状態がしっかりと物語っていた。




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あきゅろす。
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