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良いんですか?と問われた声から彼の抑えられない感情が確かに伝わってきて、こくりと頷くと背中に回っていた右腕が外された。
顔を上げると直ぐに熱を帯びた視線に捉えられ、俺の体温もぐっと上がってしまう。

繋いでいた手をそっと離すと、それが合図になった。

何も言わずにソファから降りて彼の足元に跪く。
緊張でドキドキしながら、少し震えてしまっている手をすっと伸ばすと彼の左手が俺の頭の上にふわっと乗せられた。


「無理は、しないでくださいね」

「っ……」


自分から言い出したことなのに、無理なんてしている訳がない。
俺が緊張している様子が彼にはそんな風に見えてしまったのかと思ったら残っていた羞恥心が消え、やる気だけが俺の感情を支配した。

雰囲気なんてあってないようなものだったかも知れない。
諒太さんの感情を煽ることなんて考えられていなかったし、ただ彼のことを気持ち良くしてあげたいとしか思っていなかった。

それでも、負傷した右手に当たってしまわないようにだけは注意して、彼に協力して貰いながらスボンと下着を脱がす。
目の前に現れたソレが既に反応を示してくれていることに無性に愛おしさを感じてしまい、感情のままに伸ばした手でそっと握り込むと俺の手の中でびくっと脈打った。

舐めても良いか訊こうとして視線を上げると、諒太さんがあまりにも煽情的な表情をしていたから一瞬呼吸を忘れてしまった。


「…止めますか?」


静かに問われた言葉を聞いてはっとなり、言葉で答える代わりに握り込んだソレに口を寄せて舌を伸ばす。
先端に滲んでいた液体をぺろっと舐め取ると口内に独特な風味が拡がった。
それがきっかけで、まるで酔いが一気に呼び起こされたみたいに身体がふわっと熱くなって、思考も一緒に鈍り始める。

諒太さんのソレは長さがあるからきっと奥まで咥えることは出来ない。
ギリギリまで咥え込んだとしてもそれだけで苦しいと思う。
それだと上手く出来ないかも知れないけど、苦しくても良いから可能な限り奥まで咥えたいと思ってしまった。


「んんっ…」

「っ……」


思った以上に深く咥えてしまって呻くような声を漏らしたと同時に、頭上で彼が息を詰めたのが分かった。

諒太さんもいきなり咥えられるとは思わなかったらしい。
頭に乗せられていた手にぐっと力が入り、その手が俺の頭を僅かに押し返すような動きをとる。


「そんなに奥まで咥えなくても…それだと苦しいんじゃ…」


苦しい。
けど、その苦しさが俺の性癖にストレートに刺さってしまった。

一番深くまで咥え込んだ時に喉奥へと当たるように、ゆっくりと顔を上下させながらその動きを繰り返し始めると、苦しむ俺の声と同時に諒太さんの口から熱い吐息が漏れる。


「っ……河原、さん……そんなやり方…どこで……っ…」


そんなやり方、と言われても…

フェラのやり方なんて俺にはまだ分からないから、どうすれば感じて貰えるのかは相手の反応を伺いながらやってみるしかない。
舌の使い方とかも自分がして貰った記憶を頼りに見よう見まねでやってみているだけで、それを活かせるだけの経験だってそんなにない。

だから、それに対する答えは”今この場で”と言うことになるんだと思う。


「きもちい、ですか?」


咥えたままの状態で視線だけ上げて訊ねると口の中のソレがびくんと動いた。
ぐっと唇を噛んで耐えるような表情を見せる彼に益々気持ちが煽られてしまう。

諒太さんが気持ち良くなれているなら止める理由なんてなかった。
俺はこの状況にすっかり興奮してしまっているのだから。


「…っ……んんッ……んっ」

「河原さん、……」


何かを言い掛けて止めた彼が、頭に乗せていた手を後頭部の方へとスライドさせた。
俺が奥まで咥え込んだタイミングでその手にぐっと力が入り、先端を喉奥に押し付けられる苦しさで嘔吐いてしまう。

その時に喉がきゅっと締まる感覚が気持ち良いのだと言うことは後になって聞かされたことだ。
今の俺は口の中を犯されているような感覚と、苦しむ俺を気遣うような反応は見せながらも快感に抗えずに腰と手を動かしてしまう諒太さんに興奮を煽られるばかりだった。


「っ……河原さん…このままだと、フェラじゃなくなって…しまいそうで…」


一回口を離して欲しいと伝えてきた彼を見上げ、視線で嫌だと訴える。

だって、フェラじゃなくなって困るのは俺の方だ。
その俺自身が良いって思っているんだから、問題なんてない。

それでも諒太さんがギリギリの所で葛藤を繰り返しているようだったから、一度ソレから口を離して直接言葉で伝えることにした。


「フェラじゃなくて、いいです」

「っ…でも…」

「おえってなってもいいなら、諒太さんのコレで、もっと苦しいのしてください」


途中止めされると辛いことはよく分かっていたから言い終えると直ぐにまた彼のモノを咥え込んだ。

今の俺の言動で漸く諒太さんのスイッチも切り替わったようだ。

俺の片腕を掴んで引っ張りながらソファから立ち上がった彼が、膝立ちになった俺を真っ直ぐに見下ろす。
その視線の鋭さにどくっと鼓動が跳ね、動きを止めた俺の後頭部に彼の手が添えられる。


「噛まないようにだけ注意しておいてください。後は俺が動きます」

「っ……」


静かに伝えられた忠告に対してこくっと小さく頷くと、諒太さんが腰を後ろに引いた。
カリの所まで引き抜かれたソレが、再びゆっくりと口内に埋め込まれる。
先端が喉の奥に当たると少しだけぐぐっと押し当てられ、うっと嘔吐くとまた引き抜かれ。


「っん……ん、うッ……っ…んッ…」

「…はぁ、……っ……」


それを繰り返されている内に段々と腰の速度が上がっていき、動きにも遠慮がなくなってきた。

それが気持ち良いかどうかとか、歯が当たらないようにとか。
俺の方もそんなことを考えている余裕なんて全くなくなっていって、ただ呼吸をすることに意識を向けることしか出来ない。


「ん、…河原さん……っ……すいません…っ」


それでも俺が抵抗しようとはしないからか、喉の奥に押し付けられる時間はどんどんと増えていった。
より一層強まった苦しさに自然と目からは涙が零れ、ソレが引き抜かれる度に最早唾液と呼べるかどうかも分からない粘度のある液体が口から溢れ出る。


「そろそろ、…イっても良いですか…」


耳が拾ったその言葉の意味はかろうじて理解することが出来た。
俺の方もそろそろ限界を迎えそうだった為、それに対して何度も頷きを返す。

この時の俺の頭の中はもうすっかり白く霞んでしまっていて、イったらそこから何が出てくるかとか、そんなことまでは全然考えられていなかった。

耐えるような声で「出しますよ…」と聞こえた後、喉奥まで押し込まれたソレの先端から勢い良く液体が飛び出す。


「ッ!?ンッッ!」


予告はされていたけれど今の俺からしたらそれは突然の出来事も同然だった。
射精後のソレを咥えたままの状態で激しく噎せ、反射的に飲み込んだもの以外は咳と共に吐き出してしまう。

今の一瞬で何が起きたのかが分からず、息を乱しながら混乱する俺の目の前に膝をついた諒太さんが頬に手を添えてくる。


「すみません…やり過ぎました…」


たらりと下がった眉。
それから、トーンの落ちた声。

何故だか俺はそれに無性に安堵してしまったようで。
ふっと身体から力が抜けて、ぺたりと床にお尻をつけて座り込んだ。

反省している表情の彼を見上げてへらりと笑うと、それはそれは大層な溜息が降ってきた。




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あきゅろす。
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