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名前

寮での彼はいつも忙しそうで、あまり会わない。


学校でも休み時間になると、メールやら電話やらで呼び出されたからちょっといってくると、教室にいないから


どんな人なのか、さっぱり?


寮生曰く、『チャラいけど、優しい』『チャラいけど、周りに気を使える』『チャラいけど、繊細』…とにかく『チャラい』人らしい…


でも、今人垣の中心で歌う彼は、しっかり顔を上げて前を見て、たまにメンバーや観ている人に笑いかけたり、堂々としていて『チャラい』という印象はなかった。


歌うのが楽しくて、歌を聞いてもらえるのが嬉しくてしょうがないって顔をしていた。


聞いてる人たちも、演奏している人たちも、皆笑顔だった。


凄いと思ったし、羨ましいとも思った。


ピアノの練習を始めて1か月程度の私には、あんな風になりたいなんておこがましい話なんだけど


出来れば友達が笑ってくれたらいいなと思う。


その為に、もっと頑張ろうと思った。


曲が終わり観客たちの拍手の中、にっこりと笑う彼の笑顔に背中を押されたような気分になって、私は予約を入れていた練習室へ足を向けた。


寮に帰ってきて、玄関に並ぶネームプレートの中から路上ライブ中に聞こえてきた名前を探す。


…アキラ…アキラ…これ?


『榊晃』


…サカキアキラ…


榊君・榊君・榊君…


何度か口の中で名前を繰り返してみて、小さく口に出して呼んでみる。



「榊君」

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あきゅろす。
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