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名前

ふたりの熱が治まり、衣服を整えドアに寄りかかっていると、彼女が決まり悪そうに言いだした。



「あの…さ…晃君ごめんなさい。名前を呼ばないことで榊君がそんなに悲しい顔するなんて…思ってなくって…私、頑張るから!」



頑張ってくれたら そりゃ嬉しいけど、名前を呼ぶのを頑張られても…


そう思ったけど、とりあえず彼女の気持ちはもらっておこう



「うん期待してるよ。なんなら間違えるたびに、どこでも、誰の前でも『抱っこ』して『ちゅぅ』してあげようか?」


「え…それは…いかがなものでしょうか…」



うさぎちゃんの眉が情けなく下がるから、俺はまた頬に『ちゅぅ』っとした。



―――――

転校して初めての週末。


私は焦っていた。


友達の誕生日プレゼントにピアノを弾こうと練習を始めたものの、全然時間が足りない。上手くできない。


学校がお休みだから音楽室のピアノが使えず、休日をなにもしないで過ごすことなんてできなくて、はるかさんにアドバイスを受けて、音楽会館の練習室を借りることにした。(ここへひとりで来るのに、それはもう大変だったけど)


公園内の一番奥にある建物を目指して、レンガでできた歩道を歩いていると大きな針金人形みたいなオブジェの前に人垣ができていた。


その中心から聞こえる声に惹かれて覗いてみると、高校生ぐらいの男の人たちが楽器を手に歌っていた。


路上ライブというものですか?


その中でも歌を歌っている人が、見たことのある人物だと気付く。


寮の人だ。


名前は………すいません まだ…

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