まさかこんなことになるなんて、思いもしなかった。
「……重い。」
「いやXANXUS、XANXUS。私の胸に触らないでよ、ねぇXANXUSってば」
「うるせぇ楽させろ。そもそも何でこんなになるまで脂肪ため込みやがったカス」
「女だからだよ馬鹿」
唖然とする俺の隣で、ベルがおかしくてたまらないと言った様子で腹を抱えていた。奴はまったくまともに前を見られていない。笑いすぎて引きつった声で「やっべー、俺死ぬかも」と抜かすこいつは馬鹿だ。
今日は多くの幹部が任務で、ヴァリアーのアジトにいるのは俺とベル、XANXUS、俺の誕生日を祝いに来たひたきくらいだった。
「はあ……最悪、スペルビと喧嘩した上にXANXUSと中身入れ替わってベルフェゴールに笑われるなんて…。」
「いいじゃん。ひたきが入ってるボスの表情の変わりようウケるし」
「かっ消す」
「XANXUS、憤怒の炎どうやって出すのか教えて」
「……知らねえよ、ンなもん」
「じゃあとりあえず蹴りを入れるか」
「てめーの脂肪が重くてやる気が出やがらねえ」
「無気力になってんじゃないよ馬鹿」
入れ替わった当人たちはもちろんのことだが、ため息を吐きたくなるのは俺も同じだった。
実は、XANXUSとひたきが入れ替わっていることに気付いたのはついさっき。
こつ然と姿を消していたXANXUSとひたきが談話室に揃って現れて、中身がXANXUSのひたきが「胸が重い」と文句をたれた瞬間だ。
「どーすんのスクアーロ、あの二人」
「俺に訊かれても困るぞぉ…」
それまでXANXUSが入っているひたきも、ひたきが入っているXANXUSも、何の違和感もなかったから。
多少は示し合わせたのかもしれないが、喧嘩した直後のひたきの口調はXANXUSと大した差の無い荒々しさ。そこで、俺は普段なら気付けるはずのポイントを失っていたのだ。
「私もうすぐ生理来るんだけど…このまま戻れなかったらどうしよう、何もかも真っ赤になる!洗濯…!」
「……跳ね馬のアジトには俺が帰るのか」
「うわ、それもあった。問題しかないよ困ったな…全部スペルビのせいだ。」
「ほんとに使えねえカスだな」
「っていう夢を見たんだが。まさか入れ替わったり…してねえ、よなぁ?」
「…自分のための誕生会でまさかの居眠りやらかしやがったと思ってたら、そんな縁起でもない夢見てたのアンタは…。ヤメテよね。現実になったら笑えないから。」
最悪のタッグ
無料HPエムペ!