暖炉の薪が小さくはぜる。
「おい、ひたき」
声を掛けてみても肩を揺すってみても、ひたきはまったく反応しなかった。
数十分前からテーブルに伏してからずっとこうなのだ。
これからアジトへ帰ると連絡が入ってから数時間、無理もなかった。
「……まだカスを待ってやがるのか」
待ち疲れ眠る姿に忍び寄る影が、そっと頬にかかった髪を捌けた。
大きな手が、恐る恐る彼女の頬に触れる。彼女の暖かい頬は柔らかく、幸せそうな薔薇色に染まっていた。
「カスなんぞさっさと見限って、帰りやがれ」
無知のために愛し守ることに不慣れで不器用で荒々しいのも否めないが、その手には未発達の優しさがあった。
「……XANXUS?」
「寝てろ。
カスはまだ帰ってきてねえ」
扉の隙間からこっそり黒と金の頭――数枚の報告書を小脇に抱えたレヴィとベルフェゴールが覗いていた。
「ボス……」
「妬くなっつの気持ち悪ぃ」
「しし、ボスもやっと目覚めたか」
しっかり閉まっている扉に凭れ、ベルフェゴールは俯いた。
「スクアーロさえ関わらなきゃ、
ふたりともそれなりに仲良いのにな。」
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