「ハンナー!あああハンナ―――!」
真夜中のジョーンズ家は、非常に賑やかなものである。
「ハンナ、ァッ、ハンナッ、
アッツアァァアアア―――!!!」
その賑やかはもはや近所迷惑級の騒音である。世界広しと言えど、これほど近所迷惑な家は無いだろうとハンナは考える。
しかも卑猥な方にもとれそうで、家の中においても迷惑だ。
「
ハンナハンナうるっせんだよこの腹バーガー野郎ォォォ!!」
破壊せんばかりの勢いでドアが開く。
ハンナもハンナで、かなりの近所迷惑である。
「あーやっと来たかハンナ、同じ家の中にいるのに来るのが遅いじゃないか!」
「これでも急いで来ましたー。」
お呼びかコノヤロー、とあからさまにウンザリした顔のハンナをアルフレッドは涙を浮かべながら出迎え、幼い子どものようにぎゅうと抱きついた。
ここでキュンとするような間柄ではない二人だ。いつまでも抱き合っていることはない。
「君夜はひまだろ?もっと早く来いよ!」
「あら残念、忙しくしてましたああ。アルフレッドが寒い寒い言うからマフラー編んでたんですうう」
マフラーと聞いて、アルフレッドはぱっとハンナを放した。
「俺のために?」
「リトアニアさん人形のついでですけどね、悪しからずご了承下さい」
「リトアニアには編まないのかい?」
「恥ずかしいじゃないですか」
ハンナはくるりとアルフレッドの首に編みかけのマフラーを巻き、まだ短いか、と呟いた。その間アルフレッドは毛糸の玉と繋がっているマフラーの端を持ち上げ、親指で少し撫でて「Oh,いい色だね、サンキュー!」と呑気に笑っていた。
「忘れるところでしたがご用件は。」
「ああそうそう、」
「今夜一緒に寝てくれ」
「は、」
「いやー今観てたこの映画、キュートかと思ったらスッゴく怖
「嫌です独りでおやすみなさい」
「そんなこと言うなよbaby、俺と熱い夜を過ごそうじゃないか?」
「Good night」
頑なに拒否するハンナ。
アルフレッドの最終手段が顔を覗く。
「ハンナ愛してる――――!」
「黙れ叫ぶな騒音メタボ!!
お隣さんに『
昨日は激しかったのね、つい年甲斐もなくどきどきしてしまったわ』って言われるの嫌なんだよ!!!」
ピー、ピー、と放送禁止用語が飛び交うジョーンズ家。
Mrs.メアリーが起きる!そして明日の朝が怖い!と、今度はハンナが顔面蒼白、そして涙目である。
「分かった、分かりました!一緒に寝ればいいんでしょ一緒に寝ればああ!!」
既成事実偽造攻撃。
これがアルフレッドの最終手段である。
このお陰で今回もまた、アルフレッドの勝利が決まった。やはりハンナは涙目である。
「君は俺が寝付けるまで起きていてくれるから、君に頼むのが一番いいんだよ」
「アルフレッドはいいかもしれませんけどね、私はすっかり寝不足ですよ。というわけで明日は昼まで寝ますから自分でお食事の用意してくださいね。」
「えー、それってすごくイヤだぞ?朝はハンナの作る朝ご飯じゃなきゃナンセンスだ!!」
「じゃあとっとと寝てください」
「が……頑張る」
朝、気付いたら自分のベッドにアルフレッドが勝手に潜り込んで寝ていた――。
そんなよくある光景に比べれば今回は断りがあっただけまだマシなのかもしれない。
ハンナはそう思いながら、アルフレッドのベッドに潜り、必死に目を瞑るアルフレッドを見つめていた。
頼りにしてるよ、baby!
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