「ヴェー、」
「じゃあいってきます」
「いってらっしゃい」
そう言葉を交わしたのは、もう何時間も前のこと。
キスを貰った頬はそのままに、ハンナは部屋の掃除を始めていた。
ごみ箱の中に捨ててあった、ジェラートのコーンを包んでいた紙屑をふたつほど見つける。
昨日遊びに出掛けた帰りに食べたなあと、冷たくて甘い記憶が目を覚ます。
「ちゃんとやってるかなあ…」
今日の会議もドタバタしているのだろうか。ふと彼女は考え出す。
よくイタリアから聞く話の展開に沿えば、そろそろドイツが会議を仕切り出す頃だ。
イタリアは居眠りの後、アイスが食べたいなど意味の無い発言をするだろう。
考えると、どれもこれも本当にありそうで笑えてしまう。
だが、今日はいつもとは少しばかり展開が変わっているはずだ。
実は会議場に彼の大好きなアイスを差し入れておいたのだ。
休憩時間には、兄弟仲良く分け合って食べてくれていることを信じている。
「ドイツくんに迷惑かけてないといいけど」
そういえば確か、アメリカくんもアイスが好きだとか。
…取られていないか、心配だ。
「………あっ」
気付けば同じところばかりを磨いていて、ハンナははっとする。
「駄目だなあ、フェリシアーノのこと考えてると」
ふふ、と苦笑い。
ぱんっと頬を軽く叩き、もう一度掃除に対する気合いを入れた。
「帰ってきたら感謝の気持ちを存分に述べてもらうんだから」
君の口癖を聞く次の時間が待ち遠しいよ
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