世界で初めて愛を口にしたのは一体誰か、




私たちは嘗て、木の上にいました。ふとした瞬間から私たちは大地に降り、四本の足を付け、やがて後ろの二本の脚で立ち、歩き、燃え盛る火炎にて外敵を退け、鳴き声は複雑・多様化し、創造し、死せる者に花をたむけるようになりました。

私たちの恋も愛も、異性同士の友情までもが生殖本能の成すものです。単なる生殖本能が、性欲や恋や愛や友情などとその形を多く分かたれたのは、一体どうしたことでしょう。そして、私たちは何故想い、また想われることを望むようになったのでしょうか。
体だけでもいいだとか体だけではいやだとか、行為に意味を持ち出したのはいつからなのでしょう。私たちは遠い昔、他の獣と同じく健気なまでに本能に従順で、ただ種を残すためだけに行為を繰り返してきたというのに。女の乳房が膨らむのは色を匂わすなんてものではなく、それを木の実に見立て、雄を引き寄せるためであったと言われているように。


「ねえ、イギリスさん?」

「さあな、俺には見当もつかねえよそんなこと、きっと神様だって知らねえぜ、まだ生まれていなかったかも、」


長い会議もようやく終わり、イギリスさんは、その辺に植えられていた木の太い枝の上にいた私を呼び戻しに来た。

私が身軽に木から飛び降りると、イギリスさんは慌てて私を受け止めた。普通に降りてこい、ばか。と冷や汗をかきながらイギリスさんは私を叱る。私はイギリスさんに抱っこされながら、叱られながら、ただイギリスさんの瞳を見つめている。そして、ああ、イギリスさんの瞳はなんと瑞々しい若葉のように健康的で、色鮮やかで、綺麗なんだろう、と考えていた。


「イギリスさん、ねえイギリスさん。私、イギリスさんが好きです。大好きです。愛しているんです。」

「なんだよ急に。おかしな奴だな。」


他の生き物からすれば、人間ほど滑稽なものはありませんよ。と笑うと、イギリスさんは目を細めて、ふ、と微笑んだ。そして、恋愛感情って脳にとっては異常な事態なんですよね。と言う私にキスをする。

それなら何か、俺は年がら年中イカレ野郎か?という問いに私は答えかねていた。



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