「ブオンアンノ、ハンナちゃん。」
爆竹の弾ける音や大きな笑い声が、広場から少し離れた店の中にまで届いていた。
「ブオンアンノ!」
「わ、わっ。フェリちゃん?」
いきなり耳元で声を出されて、私は驚いてしまった。声の主が誰かはすぐに分かった。「もー、ぼーっとしすぎだよ」と優しく頭を叩くフェリシアーノその人。
「あけましておめでとうございます、フェリちゃん。」
「あ、それ日本語?」
「そう。まずこうやって言うんだって。で、もっと色々続くの。」
「ふーん。難しいねえ」
フェリシアーノの声はいつだって楽しそうに弾んでいる。きっと今もニッコリ笑っているんだろうな。
「あ、ねえ。広場に出ようよ!」
「危ないからいい、怖いもん」
普通の道を歩くだけでも慎重にならなければならないのに。あんなに人がたくさんいるところ、怖くて行けない。
私がそう言うことを、フェリシアーノはよく知っている。
「大丈夫、ダイジョーブ。
ちゃんと俺が守ってあげる、ね?」
フェリシアーノは私の頭を撫でて、宥めるように「ほら立って。」と言う。私はこの調子にとことん弱くて、つい言いなりになってしまう。
「さ、兄ちゃんもハンナちゃんのこと待ってるよ!」
彼は一旦私がいる方へ回り、そっと私の手を取って甲にキスをした。えへへ、と照れくさそうに笑ってから、丁寧に私の手を引いて歩き出した。
「ゆっくり行くからね。気を付けて。犬が寝そべってる。踏まないように、あ、もちょっとこっちに寄って。よーし。」
躓かないように、転ばないように、フェリシアーノはこうして私を庇いながら一緒に歩いてくれる。ふと恋人だった頃を思い出して、優しいところは今も何一つ変わっていないことを感じた。嬉しくて口元が緩む。
「あのねフェリちゃん。私って、まだあなたのことが好きみたいなの。」
「うん。実は俺も。」
幸多き年とならんことを!
※盲(めしい)の娘。誤字ってません。
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