「イタちゃん遅いね〜」
(日本くんもまだ来ないや、珍しいなあ)
グリューワインを好きなだけ飲み、ハンナは最早ほろ酔い状態となっている。
ついツリーに提げきれないほど買ってしまった飾りを指でいじりながら、目をとろんとさせていた。
「……イタリア?」
「あのこイタリアだよね?」
「ああ、聞き返しただけだ。」
キラキラした星の飾りがどんどんハンナの指にぶら下がっていく。へにゃりと笑ってその手を差し出し見せつけてくるから、何をしてるんだお前は、と微笑んでおく。
「……言っておくが今年はイタリアも日本も来ないぞ?」
「ええっ!?なんで??!」
「何でって。元々家族で静かに過ごすのが俺たちのクリスマスだろう。」
「そ、そうだけど…来なきゃ来ないで変なかんじ…」
確かに友達になってからというもの、イタリアと日本(特にイタリア)のいるクリスマスが当たり前となっていた。
二人が来なくて戸惑ってしまうのも分かる。ただ、驚きすぎだろうとは思う。
「ハンナは俺と二人きりのクリスマスでは嫌なのか?」
「ううん、全然嫌じゃない」
指に並んでいた星がガラガラと音を立てて指から抜け、テーブルの上のあちこちに散らばる。
「寧ろ嬉しい。」
ハンナは向かい合って座っていた俺の方へ身を乗り出した。
「本当に二人きり?」
「もちろんだ」
「ドイツ!」
「…愛してる。」
いつもはまったく出ない言葉が、彼女を前にするとすらりと出てきた。バリエーションこそないものの、彼女相手なら自身の気持ちを素直に口に出せる。
だが相変わらずキスは下手なままで、キスをするたびにハンナには笑われていた。
「ねえ私からしようか――っ」
「ん、―――いやいい。」
「…ドイツがそう、いうなら」
ほんのり赤く頬を染めた彼女は陽気だ。そして、密着した後の熱い吐息の向こうのその笑顔はとても妖艶でたまらなくそそられた。
さて、この聖夜を静かに過ごせる俺たちだろうか。
Weihnachten(2009)
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