風見鶏




「そんなに拗ねるなよ」、と聞き飽きた台詞が頭の上から降ってくる。
私はこれに返事をしてやらない。いつものことだ。

続く「お前が一番だから。」とは、私の一番嫌いな言葉だった。


「フランスは簡単に言葉を紡ぐね」

「そりゃ、お前への愛は言葉に出来るだけでも溢れるほどあるからな」


耳元で囁く声も、私を抱く腕も、フランスは何をするのも優しかった。
ずっとこのまま抱いて、離して欲しくない。そう思えるほど、この場所が大好きだった。


「私、言葉はあまり信用していないのよ」


この腕の中を誰か他の人に取られてしまうのは、とても耐えられないこと。

もしフランスが嘘をついていたら。
彼は嘘が上手だから、耳を塞いで目を見つめていた。


「どうしたら許してくれるんだ、俺のお姫さまは?」


後頭部にキスをもらう。ふざけた口調がするりと耳の中に入っていった。

反対の耳から追い出して無視をしていれば、フランスはこのまま温もりと時間をくれる。
ずるいかもしれないが、私が素直に彼に甘えていられるのはこういうときなのだ。

「…キスして。
私を酔わせてみてよ」

「そんなことでいいのか?」


「お姫さま」の唐突な要望に、フランスはそんなことならもっと早くに言ってくれよと笑った。

(何で笑うの。)不機嫌な私の耳元に、彼はまた唇を寄せる。


「俺ならもっと、すごいことできちゃうけど?」






風がどこから吹こうとも



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!