好きだから

 



「番号――!」


今日も空の下にドイツの低い声が響く。
天気は見事なまでの晴れ、訓練日よりである。


「いーち」

「に」

「さん!」


あまりにも自然な流れに、一瞬遅れて空気が固まった。

点呼は緩すぎる壱、キリリと引き締まった弐に終わるはずだったが、何故だか威厳ある参が後に続いた。


「………ハンナ」

「何ですか、隊長」

「何故当たり前にそこにいるんだ」


女は戦わなくていいんだぞ、とドイツは困り顔だったが、三人目の隊員はそういう思考は持ち合わせてはいないらしい。


「ドイツ隊長をお守りするためでありますが」


隊長、他の隊員二名に引けを取らない軍服の着こなしでいて、ブーツをかつんと鳴らし敬礼をする。

いけない?と微笑む彼女に、ドイツはまた困り顔で目を逸らし頬を掻いた。


「ヴェー、ドイ…隊長」
「なんだイタリア」

「挨拶のハグがまだであります!」


緩やか壱・イタリアは誇らしげに敬礼付きでそう言い放つと、ドイツに抱きついた。

キスは身長差の関係上、ドイツからしてやる。
右、左と順に唇の弾ける音がすれば挨拶は完了だ。イタリアは満足して日本の隣に戻る。


「……仕方ない、今日だけだからな。」


ドイツが諦めて訓練参加の許可を降ろすも、ハンナはなかなか日本の隣へ戻らない。


彼女の視線はドイツの顔と地面を行ったり来たりで、落ち着きがない。

その意味が分からずドイツはその往復を見つめるばかりだったが、
ふいにばっちりと目が合うと耳まで赤くした彼女が恐る恐る口を開いた。


「隊長、私もハグしてほし…であります」

「……ああ、そういうことか」


ドイツははっとして優しくハンナの体を抱き寄せ、唇に一つキスを落とした。

これでいいのか、と笑いかける顔は穏やかとはまたかけ離れていたかもしれない。

とりあえず、首まで精一杯に赤くした彼女には正解だったのだろう。




「またあとでねドイツ」

「イタリアの追跡、頼むな」

「はい」


まだ赤い頬を隠すような敬礼のあと、三人目の隊員はドイツに背を向けた。

脱走兵であるイタリアを追い、およそ止まったところでドイツに連絡という任を授かったためである。




「ああいう方を見ると、心が洗われるようですね」


「あー、……なに?」







「に、日本………」



















わたしだってキスしてほしい、抱きしめてほしい。イタリア君は、ずるい!





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