「でさぁ、来週俺んちの……」
ポーランドが話す、イタリアが聞く。
「うんうん」
「な、それってマジよくない?」
内容はピンク色のペンキとか、ポニーとか、お菓子とか。
顔を会わせては口げんかをしている人々に聞かせてやりたいほど、この会話はまるで平和そのものだった。
そしてイタリアの肩からひょっこりと現れる、くるん。
「にーいちゃんっ」
「ハンナ。どうしたの?」
「うん、ピッツァが焼けたから呼びに」
ふわふわの茶色い髪を躍らせる彼女は、髪の分け目にくるりんとした毛を生やすれっきとしたイタリアの妹である。
「おともだち?」
「うん」
「そっか!」
一瞬イタリアから外れた彼女の視線がポーランドとぶつかる。
「ブオナセーラ!」
普通なら好感度ゲット間違いなしの満点の笑顔が咲く。
が、人一倍人見知りのポーランドは、ぺこりと軽く頭を下げイタリアの背に隠れてしまった。
「この子は俺の妹のハンナだよ」
「あなたがポーランド?」
「……そうやけど」
イタリアの妹と聞いて、ポーランドは目が見える程度に顔を覗かせる。
大きな目が興味津々にこちらを見ていたので、ポーランドは数秒と保たず引っ込んだ。
思わず声も、小さくなる。
「わたし、ポーランドのお菓子好きなんだ!」
「……」
「今度作り方教えてね」
ぴゃっと隠れられても、ハンナは諦めない。
すかさず隠れた顔を追いかけて向き合い話しかけるという流れを繰り返した。
「ハンナ、ポーランドは人見知りだからあんまり迫らないであげて」
ポーランドの焦りようを見かねたイタリアが、やんわりと注意する。
ハンナは、えっそうだったの?と鈍感ぶりを発揮、遅れてしゅんとした。
しかしもう一度だけとポーランドのいる背中へと回り込む。
「ごめんなさい」
「…別に、ええよ」
初対面の相手にいっぱいいっぱいというように、ポーランドの返事はたどたどしい。
リトアニアに対する図々しさを忘れてしまうほどである。
「…よかった、嫌われてなくて!」
一歩下がり、彼女との距離を確保する。
そして胸に手を当てて笑った彼女を、ポーランドは夢中で見ていた。
(…そんなすぐ嫌うわけないし)
むしろ好き、なのかも。
ポーランドはそう思い始めていた。
太陽の温かみに似た笑顔に火照ってしまうのだから仕方がない。
でもやっぱりまだよく知らない相手は怖いから、
たとえ相手が彼女であろうとイタリアの背に隠れてしまう。
「あ、にいちゃんピッツァ!」
「冷めちゃう!」
「ポーランドも一緒に食べようよ」
有無を言わさずポーランドの手を引く柔らかい女の手。
声にならない声を上げつつ、彼女についていく。
同じ手に引かれて、イタリアが駆け足を始めた。
「ポーランド、ハンナのピッツァは美味しいんだよー」
「知らんし」
「きっと大好きになると思うなぁ」
それはどっちのことだろうかと訊けない午後
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