「今日は疲れましたね…」
着慣れないワイシャツ。壁に片手をつきながら、ぐいとネクタイを緩める。
ぐったりと倒れるように布団に寝転び、遅くなってしまった晩ご飯や風呂のことをぼんやり考えた。
「菊?」
襖を控え目に開けて見えたのは、何輪もの梅の花が散りばめられた和服を着た少女。
その円らな目の先に眠るのは着替えることさえ忘れて眠ってしまった日本だった。
日本は深く眠っていて、少女が枕元まで歩み寄っても眉一つ動かない。
「頑張りすぎなんだよ菊、あんまり心配させないで…」
白い指でさらりと前髪を避けると、少女はその清らかな唇をそっと日本の額に落とす。
畳の匂いに包まれながら、少女はしばらく日本の寝顔を見つめた。
「…じゃあ、またね菊」
うっすらと目が開く。襖が閉まった後のこの部屋に、もう優しい少女の眼差しは無い。
日本は身を捩らせ布団の少し深くへ潜ると、額に片手をあてがって微笑んだ。
ほんのり温まった隣にふと目をやると、まだ彼女が幸せそうに寝顔を見守っていてくれているような気がした。
「今夜はあなたの良い夢が見られそうです、ハンナ………」
嗚呼、あなたがくれたこの甘美な胸の高鳴りよ
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