4.1 午前10時




ハンナちゃんから電話が来た。昨夜話していた、入れ替わり企画取り止めの件だった。幸いそのとき僕はまだ誰とも会っていなかったから、ちょうどよかった。


「はい、じゃあね」
(ふう………)


それ以外に、彼女は一つ気になることを言っていた。
ノル君の様子が今朝からおかしいらしい。"要求"が無く、懐妊したという話が嘘だと気付くとまるでスーさん並の恥ずかしがり方をしたのだそうだ。

何故僕がこの件を気にしているのかというと、それにはたった今目の前で起きていることに関わりがあった。


「それじゃ、会議を始めるよ」
うーし!そんじゃ会議始めっぺー!

「アイスが号令ばかけっと新鮮だない」
アイスが号令かけっと新鮮だない

「おい、俺の体でいつもみたく喋んねえでくれよ」
ちょっと、僕の体でいつもみたく喋んないでよ

「………別にいんでね?口調は変わんねえど」
いんでね?口調は変わんねえど。


ターさんのように前へ前へと出るアイス君。アイス君絡みでよく反応する、ノル君みたいなスーさん。アイス君のようにあまり喋りたがらないターさん。スーさんのように、最後に一言まとめ的な役割をするノル君。
どう考えてもターさん以外(ノル君も?)、ここまで真剣に互いを演じるとは思えない。もしかしたら、本当に入れ替わっているんじゃ……


「ねえ、フィンはフィン?」
おめ、フィンけ?

「えっと、はい。僕は中身も僕ですよ」

「ハンナもハンナだったな」
ハンナもハンナだったど。

「なして二人だけなんだべ?」
何で二人だけ無事なの?ずるい。


案の定会議はそっちのけ、話の内容は突如自分達の身に起きた事件についてになっていた。入れ替わりは僕の中で、疑いから真実になった。原因は誰も知らないが、中身が違うことだけは確かだった。
どうにか原因を探るべく、何故か無事である僕、それからハンナちゃんの話も聞こうということになり、彼女もこの場に呼び出された。







「アイス〜っ!!」

「うわっ」
おぉ?!


先に話しておくべきだったと、僕は後悔した。


「あれ……?アイスが嫌がらない……」


僕はハンナちゃんを混乱させるまいとして、ここへ来てほしいとだけ伝えていたのだ。こうなることは予測できた筈なのに。
抱き締めた相手のリアクションがいつもと違うのは当然だった。だけど、入れ替わりのことなんて何も知らないハンナちゃんが驚くのは無理もない。


「アイス、どうしちゃったの……?」

「ああ……あのねハンナちゃん、これは」


抱き締めているのはアイス君の体だけど、中身はターさんだ。そう説明しようとしたとき、アイス君(ターさん)を抱き締めたまま混乱していたハンナちゃんと、アイス君(ターさん)が引き剥がされた。スーさん(ノル君)によって。

ハンナちゃんはまたしてもぽかんとする。



「でれでれすんな」
でれでれすんな。











体は違えど


「ス、スヴェーリエ?」

ハンナちゃんを離すとアイス君(ターさん)の首根っこを掴み、威圧感のある睨みを効かせるスーさん。否、正しくはノル君なのだが、今のハンナちゃんには知る由もなく、彼女は不思議そうにスーさん(ノル君)を見守っていた。




あきゅろす。
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