表の妻と裏の夫




「みゃーお」

「あら、猫?」

「誰かに似ているな」

「こいつハンナに懐いてる奴だ」

「可哀想に。怪我をしているわ、この子」

「おそらくハンナを庇ったんだろう。ハンナは無事なのか……」

「ドイツ」

「すまん、今一番不安なのはお前だというのに」

「……いいよ、気にしないで」




「なるほど。それで私たちみたいなのを虱潰しに襲って歩いていると」

「でもそれももう終わり。12時になれば裏世界は僕たちもろともドーン!って無くなっちゃう」

「え?!じ、12時ってあと……!」

「―――……、うん」

「私のこのアザがその印ならよかったのに……!」

「ハンナちゃん………ありがとう、その気持ちだけで十分だよ」

「裏ダン生きてる……?」

「だいじょうぶだべ」

「んだ。あんこはうざいからな」


「お、おめぇらなあ!まあ元気だけどよぉ!」

「そこやかましい!少しは足掻け!」

「今更もうどうしようもないよ。どうせ消えるなら、ほっといて。好きにさせて」

「諦めたら駄目だって!仲間いっぱいいるんでしょ?ギリギリまでそいつら信じなさい!」

「……あと2分切ったど」

「うそ………!」

「おいハンナ、ちょっとこっちこ」

「なに?裏ノルウェー」

「頬怪我してっぞ。……俺の所為、だけんちょ」

「ん、これくらいどうってことないよ。気にしないで」

「…………ごめんな」

「ひょあああああっ!!な、舐め……!?」

「わ、珍しい。裏ノーレが自分以外の誰かを舐めるなんて」

「えっと、あ、ありがとう………」

「怪我、早く治るといいな」

「裏ノルウェーの方もね」

「俺のは大したことねえ。それとも、舐めてくれる?」

「そ、それは……!」



「――――皆さん!キャッチが入りましたよ!!」

「おお?!何だって、裏フィン!」

「わ…………!印が見つかったそうです!」

「ほ、ほんとう?僕たち助かるの?」

「どんな印だって言っどる?」

「えっと、印というか言葉らしいです! "ハッピーニューイヤー"。―――新年を祝う言葉だそうです」

「何だそれえええ!!!!」

「落ち着け、ハンナ。毛繕いしてやっから」

「いらないよ!それに毛繕いできる毛って髪しか―――あははは、くすぐったい!首筋止めてって!!」

「やーっと笑ったなあハンナ。さすが俺の大親友だべ!」

「……そろそろ、撤収すっか」

「そうですね。裏ノル君、行くよ?」

「ん、ほだな」

「ハンナちゃん。大変なことに巻き込んだのに、僕たちのこと励ましてくれてありがとう」

「助かってよかったね、向こうに帰っても元気で。もし今度こっちに来るときは絶対服着てきてね。これ、他の裏世界の仲間にも伝えておいて」

「うん分かった。それじゃ、僕たちもう行くね」

「じゃあね、猫科のみんな」

「モイモイ!」








恐るべき順応力
‐全裸相手に平常心‐









「はあ、にしても助かってよかった……!一時はどうなるかと!」

「どうしたぃ兄弟。もっとババーン!!って喜ばねんけ?」

「表のハンナのこと、考えてた」

「恋、だない」

「やがまし眼鏡」

「隠さなくてもいいよ。みんな分かってる」

「んっ?おめぇら何を分かってんの?」

「……あんこ以外、だな」



あきゅろす。
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