「〜…何やその視線は」
じっとりとした視線に耐えられずそう問うと、俺の顔のなにかを面白くなさそうに思っている目がふいと逸れた。(な、なにいっ)
エアも俺と一緒でポーカーフェイスでいることが多い。さらに彼女は今無口になっているから、機嫌の判断材料は目だけだと言うのに。
「分からんかー」
「ヒントくれへんの?」
「ウソ」
(嘘?うそ、なんてついとったか?)ありもしない記憶を引っ張り出そうと必死に考えた。
数秒間ものすごい勢いで考えた後、癖で特にずれてもいない眼鏡に触れる。(それやそれ)と意図しないところでエアの答えが明かされた。
「……この眼鏡あかんか」
「侑士は視力ええやろ。そこや。眼鏡に罪はあらへん」
普段眼鏡の話になったとき、相手がつっこんでくるのは大概このレンズが丸いところだ。
しかしエアは違う。「伊達」眼鏡という、視力の補正という眼鏡本来の目的から逸れた存在が許せないようなのだ。
「何で眼鏡かけるん?」
「裸眼見られんのはずいねん」
「真顔で説得力無いよ」
エアは(別に眼鏡外したかておかしないで、)と俺の丸眼鏡を奪って、裸眼の顔をしげしげ見詰めて言った。
「あんま見つめんといて。
本気ではずいねんて」
「うわあ侑士が照れとる〜」
「聞いとるかそこの嬢ちゃん」
そんなに俺の照れた姿が珍しいのか、エアはなかなか眼鏡を手放さない。
それどころか、面白がって自分で掛けた。おかしそうにクスクスと笑っている。
(まったく困ったお姫さんやな)
(…ほんなら、)
ちゅ、
(眼鏡外すんはちゅうするときや、次から気い付けや)
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