「イ ギ リ ス 〜!!!」
今朝は強烈な殺気で目が覚めた。
この家には俺とハンナとノルが住んでいるが、ノルが朝からこんなまがまがしいオーラを発する訳がなく、主はもう決まっているようなものだった。
「おはよう」
「スッ、スヴィー!」
向かう洗面所、やはりいるのはハンナだった。
ハンナは両手で頭のてっぺんを隠すというポーズをとっていた。ひどい寝癖でも付いているのだろうか。
「お、おはよう!朝ご飯、作っておいたから!」
「おう。あんがとない」
いつもは今頃眠っているのか起きているのか分からないほどなのに、何だか今朝のハンナは元気だ。
「……寝癖け?」
「えっ、まあそのー」
「手、退けてみ」
ハンナには見にくい場所だからと助けを申し出たのだが、ハンナはなかなか手を離さない。ハンナもそういう年頃なのだろうか。……もう何百年も一緒にいて、今更?
「……負けた。スヴィーなら、笑わないよね」
「あぁ?」
しばらく沈黙が続き、ハンナは何かを諦めて頭から手を離した。
ハンナの頭にあったのは………
「ハンナ、みみが」
「あんまり見ないで」
立派な猫の耳が付いていた。
「めんげぇ。」
「うー、撫でないで!」
引っ張れば痛がるし、本来人間の耳のある場所を探れば何もない。どうやら本物らしい。
可愛いし物珍しさもあってじっと見ていたら、ハンナは拗ねてその辺のタオルを被ってしまった。ちょっと、もったいない。
「はー学校どうしよう」
「堂々と出してっていんでね?フランスも時々……」
「フランスと一緒にしないで、泣きたくなる」
「すまん」
本当なら休ませてやりたいが、生憎今日は大切な試験がある。昨夜も遅くまで勉強していた、その努力はきちんと結果として実らせるべきだ。
本人もそのつもりらしく、対策を練っている合間に「テストが終わったら覚えてろ、眉毛め」と呟いている。
「……あ。帽子!
ねえスヴィー、制服に合う帽子持ってない?」
「帽子か………ちょっと待ってれ」
そう言って向かうのはとある一室。まあ、これならあまり違和感なく被っていけるだろう帽子が置いてある。
持ち主には後で起きたら断っておくことして、俺は黙ってそれを持ち去った。
「ほれ」
「すごい、ちゃんと隠れる!
でもこれって―――」
「スヴェーリエ、俺の帽子………ん?」
帽子はハンナが猫の耳をすっぽり隠しても浮かず、制服にもまあまあ合うものだった。
………ノルから無断拝借したものなわけだが。
「寝癖か?」
「……そうです直りません」
「絶、対、 なくすんでねど」
「はーい……」
やれやれといったようすで朝ご飯を食べに去っていくノル。ハンナはほっと安堵のため息を吐く。耳さえ隠してしまえば問題はない、俺も安心した。
「……良かったない」
「う、うん」
さて、あまりゆっくりしていると遅刻してしまう。いつもの進行具合に比べて大分遅れている、早いところ朝ご飯を食べてしまわなければ。
俺はまだ固まっているハンナの頭を帽子越しにぐりぐり撫で、食卓へ行くよう促した。
「ああ、ノーレって怖い」
結局ハンナに猫耳が生えた訳は訊かなかった。
本人は事情を分かっていたようだが、きっと話したくはないだろうから。
あんにゃたちの思いやり
「ちょっと!!なに人の頭に猫耳生やしてんのよ!」
「知るか!俺はお前がどうにか困るよう呪っただけだ!つかお前例のくっせぇ缶詰生徒会室に放置したろ!!?」
「知らなーい」
「てんめ」
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