…彼がわからない。
「四月一日くん、いまどこにいるの?」
ここにいるよ!見えないの?なんて、驚いた顔を見せられる。
あなたこそ、今私という人間が見えているの?
夢という名のモザイクを通して見ているような目をしてあなたは本当に、私のことが見えていると言い切れる?
「見えないよ。
四月一日くんはどこなの?」
「変だな、侑子さんに相談してみようか…」
近頃のあなたはまるでとうめい人間だ。
“彼”は今現在、夢か現か、どこにいる?
「かえでちゃん―――――?」
不思議そうにする彼をよそに、私は思いきり彼に抱きついた。
手を離されたふうせんみたく空の彼方へ、消えて見えなくなってしまわないように。
彼が、私の知らない行けない世界に行ってしまわないように。
びくんと彼の体が動く。
また、別の“彼”が目を覚ましたらしい。
「あれ…かえで、ちゃん ないてる の……?」
彼の衣服を濡らす液体が自分の泪とも知らず、私は彼の服を濡らし続けた。“彼”が入れ替わっても、服の濡れた箇所は変わらなかった。
水玉模様、
ぽたぽた、なみだのもよう
(私もどこかへ行ってしまいそう。)
無料HPエムペ!