暴君の放埒

 


「あ、起きた。」


つかの間のうたたねを経て目を覚ますと、
阿散井が ソファにこっちを向いて座っていた。


「おはようございます、日番谷隊長。」
「―――…ああ。」


目をこすりながら、それとなく返事をする。
寝ぼけ眼に、この鮮やかすぎる赤い髪は少々きつい。

阿散井は今まで読んでいたらしい雑誌を隣に置いて立ち上がり、
次の瞬間には見ていて気持ちよいほど思い切り伸びをした。

あまりに自然すぎて、寝起きにつっこむ気力も湧かない。


「あ、返事が無かったんで勝手にお邪魔してました」
「いつものことだろ。別に構いやしねえよ」


俺の呆れ顔のどこが面白いのか、阿散井は爆笑する。

ここが隊首室だと知っているだろうに、本当に自由な奴だ。
(笑って返さねえで少しは慎みを覚えやがれ)心の中で毒づく。


「ところで何か用か。」

「ああ!そうそう、隊長これからお暇ですか?」
「暇じゃねえ。」


「…と言いたいところだが、まあそうだな。」

「良かった―!」
「で、俺が暇だと何なんだ?」

「実はですね、剣八さんと一角の奢りでパーティーをやるんですよ!」


パーティー?

時期的に言えば、新年会に当たるそれだろうか。
それなら昨日、隊で揃ってやったばかりだろうに。


「なんでまた。」

「それがですね、チンチロリンで大勝ちしまして!」

「はあ?」
「やあ…気持ちいいくらい運が良かったんですよねえ。」


新年早々ギャンブル。ロクな大人じゃねえ。
あの松本でさえまだ大人しくしているというのに。

呆れていると、阿散井が一方的に腕を組んできた。


「ということで行きましょ、隊長!」
「おい、俺は行くなんて一言も言った覚えはねえぞ」

「まあまあ、そんなときもありますって。」

「どんなときだ!」


楽しそうに笑う阿散井は、最早肯定しか聞きそうに無い。
俺はこのまま引っ張られていくしかないのだろうか。


「大丈夫ですよ、隊長にお酒は飲ませませんから。」

「そういうことじゃねえ」


女の身で十一番隊の上位席官を務めた経歴のあるこいつだ、
俺でもそう簡単には逃れられないことは分かっていた。

……仕方ない、少しなら付き合ってやるか。














(隊長がいてくれなきゃ誰が私を止めたり連れ帰ったりするんですか!)
(俺じゃなくてもいいだろソレ!!弟を呼べ、弟を!)


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