雨乾堂。
穏やかな空気の漣が、そこにあった。
静かな引き戸の音。
そして、凛とした声が鳴る。
「失礼します」
見遣れば柘榴色の髪した女がこちらを見ていた。
浮竹は目元の方から、やんわりと笑いかけた。
「珍しいな、今日は恋音か。」
「どういった意味でしょう」
恋音は悪戯をした後の子供の様に、にやけるのが抑えられない顔をしていた。
その顔で「瀞霊廷通信」と書かれた表紙の雑誌を差し出すと、浮竹はきょとんとする。
「あれ、
なんで君がこれを持ってくるんだい?」
「本来届ける筈だった人から脅して奪ってきました」
彼女の大胆さには、恐れ入る。
「……それはそれは」
「浮竹隊長にどうしても会いたかったんです」
半ば遮るようにして言い訳が飛び込んでくる。
苦みを見せつつも微笑み、立ったままの彼女に「座りなさい」と辺りの座布団を軽く数回叩き合図をした。
「拙かったですかね」
「いいや、いいだろう。
ちょうど俺も君と話したかったところだよ」
にっと笑って、示された場所にすとんと腰を下ろす。
「そうやって甘やかしてくれるところ、…やっぱりあたし貴方が好きです」
恋音の唐突な告白に浮竹は照れくさそうに頭を掻いた。
「参ったなあ。
うっかり受けると明日から君の弟に熱烈な視線を送られるじゃないか…」
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