あとはこの性格さえまともなら、言うこと無しなんだが。
「たいちょーたらいま!」
昼間っからやけに静かだと思ったら、あいつらがサボって居なかっただけだった。
酒の臭いと共に帰ってきた煩い2人に吹きかけるようにして、俺は大きな溜息を吐いた。
「まったくお前等は…」
「眉間に皺寄って固まりますよォ隊長!」
「暇そうれすね隊長!パーッと遊びましょうか?」
松本と、阿散井の姉の方。手には大量の紙袋。
大方、現世に出て買い物した帰りに酒を浴びてきたんだろう。
また仕事ほったらかしやがって。
呆れて机の上の、書類の塔を見た。
(……終わってやがる。)
ミスが見あたらねぇ。完璧にすましてある。
しかも松本の分まで綺麗に終わらせてあった。
阿散井はこの技量もあって、こいつはサボり癖を補っても有能な部下だ。
認めたくはない、が、流石に俺もそこは認めている。
サボることを怒りたいが、一応ノルマはこなしてあるわけで。
「…チッ、タチわりぃんだよお前は。」
「隊長暇ですね。」
「俺は暇じゃねえ。」
阿散井を十一番隊から引き抜いてきたのは元はと言えば松本の我が儘だ。
仕事の速さを聞いていた俺は、少し渋りつつも(松本が余計五月蝿くなりそうで)更木に掛け合って俺の隊に入れたんだった。
…今ではそれが良かったのか悪かったのか分からねぇ。
仕事の方は間違いなく、前より格段に速く片付いているが。
「おーし乱菊ゥ、温泉入ってくっかあー!」
「いいわね、あたし汗かいてべたべただったしィ。」
「うんあたしもあたしも。汗かいちゃった、」
「谷間に!」
「ギャハハハハハ!!!」
この馬鹿笑いがうるせえ。
ああ、もうどうでも良いから。
今すぐどこへなりと行ってくれ。
「日番谷隊長も入りますか?」
「黙れ阿散井。」
その内ブッた斬ってやろうか。
そんな殺意さえ湧いてくる。
お前の姉はどう扱えばいいんだ、阿散井(弟)。
「そんなもん。知ってたら苦労はしないっスよ」
後日問うたら、何とも言えない表情でそう答えられた。
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