白石くんは今日も絶頂です(白石)




「エアちゃん、自分こんな話知っとるか?」

「知らんなぁ」

「まだ話してへん」


白石蔵ノ介、14歳。

忍足謙也の従姉妹に初恋を捧げる、自称イケメンの四天宝寺中テニス部部長である。


「……でもな、それはベラドンナが持っとる猛毒成分のアトロピンがもたらすもんで…」


彼は無類の毒草好きで、マニアとも呼ばれる域にいた。その事実を知らぬ者は四天宝寺にはいないとの専らの噂だった。万が一いたとすれば、それはモグリだと言われるほどである。


「……他にもスコポラピン、ヒヨスチアミンっちゅう猛毒成分もあって、それが………」


彼にうっかりそのネタを振ってしまったら最後、最低でも30分は拘束されることになる。それ故に、彼の前では毒草のみならず植物の名前を口にしてはならないという暗黙の了解が存在していた。


「…毒と薬は紙一重っちゅうことや。」

「怖いなあ"美しい貴婦人"。」

「美しい花にはナントカ、やな」


今日、不運にも白石の毒草話に捕まってしまった四天宝寺中テニス部員と、部外者約1名。金太郎は開始早々夢の中へ、また真面目でしっかり者の小石川でさえもぐったりと背もたれに沿って反り返っていた。


「はは、じゃあ蔵くんも美人さんやから気い付けなあかんねぇ」


死屍累々のその中の、唯一の生き残りが件の人物・忍足エアである。彼女は他校生でありながらも自然に混じることができる不思議な人物である。


「…なあエアちゃん。褒めてくれるのは嬉しいけど、女の子が男に美人言うのはどないや?」

「事実やん、物知りでめっちゃかっこええで蔵くん。毒草のお話もオモロいしね」


それだけでなく、白石の毒草話に終始まっすぐな姿勢で、しかも興味津々に臨むことのできる強者である。


「あ。せやエアちゃん、今日下着の色なに?」

「ははは、蔵くんはいっつもオモロいこと訊きよるなぁ」

「……エアさん、こういう場合は殴ってええんですよ」

「水い「答えたらアカン!!」

「ああっ!
ちょおケンヤ黙っとけや!!」

「黙るんはお前やこの変態が!!」







白石くんは今日も絶好調です


「変態?…フフフ、それで罵ったつもりかケンヤ?甘いわ。変態は褒め言葉なんやで、逆効果や。」

「…部長きもいっすわ」

「エア、向こう行くで。どっか白石のおらんところに」



あきゅろす。
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