から、ころん。
から。
ころん。
その音はころころとアスファルトを滑り、エアの耳に転がり込んだ。
(良い音……)
彼女は目を覚まし、ぼんやりしていた。何だか体がぽかぽか温かくて、少し揺れて、おまけに心地の良い音が一定のリズムで聞こえてくる。
目は確かに開いているのに、開いていないようで、起きているのに、まだ眠っているような感覚がした。
(それに、あったかい匂いがする……)
温もりの優しい匂いが、余計に彼女の意識を曖昧にさせた。広い背中に収まり、とろとろと微睡んでいる彼女には、何かを考えることなど出来なかった。きっと夢の中なのだと無意識に思っていた。
うなじをくすぐる硬い癖っ毛さえ、彼女を夢の縁から誘い出すことはできない。しかも、背中の主がでたらめな鼻歌まで歌い出すものだから、彼女は再び深い呼吸を始めてしまった。
「あー!千歳や!」
「よ、金ちゃん」
「やぁっと来よったな千歳ェ……ん、その背中の女の子は誰や?もしかして誘拐か?!」
「ん……誘拐っちゃ誘拐かねぇ?」
「おいそれマジやったら全然笑われへんやんけ!!金太郎、千歳のコケシ持ってって!」
女の子を拾いました。
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