カーテンが片側だけ開いている、真っ暗な部屋の隅。叩きつける雨を掌に受けようとあなたは窓硝子に触れた。
畏れ、しかし恋いこがれるように、天の嘶きを待っていた。
時折稲光に照らされて、嵐の空の色とあなたの刹那の表情が伺えた。降り続いている雨とは違い一瞬の雷鳴を、少しでも長く聞いていようと伏せる目だ。
重苦しい黒い雲が固まり 雷が落ちだしてから、ずっとこの調子が続く。ふしぎな自分の世界におちいることの多い彼女を相手にした日から、放置に慣れてきてはいるが、慣れきることは未だできていない。
腹に響く万雷に、怯えるどころか じっと嵐を見つめたままの背中。夢から引っ張り出すように強く抱きしめると、控えめな笑い声がした。
「雷が怖いの?」
「…まさか。それは君だろう?」
あなたはようやく俺を見、とびきり機嫌良く頬笑んだ。
「それがね、最近少しだけ 好きになったんだ。」
腕の中で体の向きをかえると、胸板に耳を当て 俺の声を聞き出した。雷の轟きをそうしていたときと同じに、あなたはそっと 目を閉じる。
「少し前まで俺がこうしていなければ泣いていた君が?」
「何事もよく見聞きしないと 良いところは見つからないものだよね」
今晩は酷く荒れている。
雷は依然として天から空気を裂いて地を突き刺し、唸り声ののち 雨音が一層強さを増して聞こえてくる。
「雷の轟きってあなたの声の重低音と似てるって気付いたの。だから好きになったんだ。」
「……そういうふうに言われると、照れる…」
ぐいぐいと胸に耳を押し当て、ほら!と嬉しそうな声だ。あなたは俺を巻き込んで、また自分の世界へと入っていく。
Stormy night
(俺も 雷は好き。あなたがこうして近くなるから。)
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