その日、私は死ぬはずだった。
裏切りの銃弾が体を貫いた。
仲間が自分の命可愛さに私を撃った。
私はこのまま、まだ見ぬ兄に会うことも叶わず死んでいくのだろうか。
「大丈夫。あなたは生きるわ。」
痛みで霞む意識に陽光が差した。私が倒れている森に差し込む木漏れ日のように暖かい声が私を励ましている。希望を信じよ、と。
「私は――。あなたは?」
「……エータ…」
そ、と頬を撫でる少女の小さな手のひらは、暖かく柔らかい。私の苦しみに歪んだ顔を映し込む青は、淀みなくどこまでも澄んだ少女の瞳だった。
少女の優しい愛撫の如き声に、ふうと意識を失った。もし死んだのだとしたら、それはそれでいい。私は最期に天使に出会えたのだから。
「死んではいけないの…エータ…」
そう天使が囁いたのを覚えている。
再び目を覚まして上半身を起こしてみると、ずきんと腹の痛みを思い出した。ぎゅっと強ばらせて細めた目の力を解くと、私の手を握る小さな手が目に入った。その小さな手を辿ると、あの少女が私の膝に頭を載せて眠っていた。
どうやら私はこの子に助けられて、この子は疲れて眠ってしまうまで私についていてくれたらしい。
私を助けてくれた少女。
彼女はジッリョネロファミリーのボスの娘なのだそうなのだが、それは母娘以外には私しか知らされていない事実だった。
「あっ。目、覚めたみたいね」
良かった。にこりと私に微笑みかける女性。私の不安と警戒心剥き出しのしかめっ面を映す青は、どこかで見たような気がしていた。
「私はアリアよ。あなたは?」
「…エータ……」
「エータ!そう、いい名前ね。」
アリアと名乗るこの女性は私の膝を枕に眠る少女の頭を愛しげに撫でた。よろしくね。と微笑まれたのだが、生憎私はうまく笑うことができなかった。
「ねえあなた、突然だけどジッリョネロに来ないかしら。」
「…どこの誰とも知れないのに?」
「あら、分かるわよ。
あなたはエータ、ユニを引き付けた子よ。」
でしょ?とアリアさんはまた私の顔を覗き込んだ。同じ女なのに何かどきっとして、顔を逸らす。
ああ、この青。
天使の瞳のいろ、だ。
ヘヴンリー・ブルーの瞳
神は私に二つ目の命を与えたというのか
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