手はイカれて
ぶるぶる、
がくがくと、震えていた。
あいつはこんなことを平気でやっていたんだ。
俺はこれから朽ちゆく肉を前にして、気絶しそうなほど混乱している。
俺が「腐る」という未来を作った。
あの真っ白な目は一生忘れられそうに、ない。
「怖い?」
精神構造が狂ってる。普通じゃない。
だから俺が何で震えてるのかなんてこいつには分からないだろう。
平気。
だから。
「俺は、人を殺した…」
「正当防衛です」
「あなたは、
自分を、守っただけ。」
ひたきが俺の背中をすいすいとさする。摩擦の熱が染みてきた。
体は温まって震えも落ち着いているのに、吐き気と涙が別の生き物であるかのように止まない。
「甘さも殺せない奴は
この世界では生きられない」
向けられたことのない冷たい声が脳天を殴りつける。
拗ねて困らせるはずが逆に、俺が濡れた犬のように俯いていた。
「心が殺せなければ
――私たちは殺されるだけ」
一瞬の殺気と、俺を切り刻む恐怖という氷の刃。
ひたきの凛とした目と銃声は、自分たちが「生きる」未来を切り開いた。煙立つ銃口が向いているのは、俺の見えない背中の向こう側。
「これらの、屍に」
平気で人が殺せるのは、あの目が自身の心を噛み殺すから。
恐怖も
涙も
悔いも
そうして傷口から溢れる底無しの何かが、ただ、殺せばいいのだと。
彼女曰わく
「けどあなたには、変わらないでいてほしいな」
(あなたに私とは違う強さを、と)
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