寝ている君にダイヴ!




これは、そう遠くない未来の一部分である。
(診断メーカーの結果を元にしたお話です)






いつにも増して、俺の速読が光る。一刻も早くこの書類の山を片付けてしまいたい、その思いが力になっていた。

デスクの前方にあるソファは、俺が仮眠を取る他、ひたきたち部下や客が使っている。今はそこで、ひたきが俺を待ちながらすやすやと眠っていた。


「あともう少し………」


話したいことがあるが、急ぎではないから待つと言い、先ほどソファに腰掛けたひたき。昨夜は遅くに任務から帰ったばかりで、疲れも溜まっていたらしく、直ぐに落ちてしまった。

見えそうで見えない愛しい人の寝顔。初めの内は気にするあまり手を止めてばかりいた。しかし、終わらせてからなら心置きなくいくらでも見られる。そのことに気が付いてからの、俺の集中力の凄まじさと言ったら。


「くーっ!終わっ、たあああ!」


鬼のような量の書類を片し、達成感たっぷりに伸びをする。伸びをしながらチラリと見やると、俺の大きな声に反応してひたきが身じろぎした。


「んん……」


小さな唸り声。数日間会えなかった分、なおさら色っぽく感じられる。我慢なんてできなかった。


「ひたき!終わったぜっ!!」

「んぐっ」


一秒も惜しくて、椅子を蹴飛ばしひたきの眠るソファに駆け寄った。そして勢いそのままにダイブ!

……までは良かったのだが。



「――――いかがなさいましたか、ボス?」



優しく問い掛けてくる声と笑顔に、俺はすぐさま我に返った。脳内では警報の鐘が鳴り響き、「やばい」の三文字が駆け巡る。過去の経験が必死に俺に訴えかける。この感じ、この声と笑顔はそのままの意味ではない。

そう、「やばい」のだ。


「いやぁ、その、愛が暴走して…… かはっ!!」


寝ぼけ眼のひたきにキスをして、甘い時間が始まるはずだったのに、何故こんなことになってしまったのだろう。俺は鳩尾に激しい一撃を喰らい、ひたきの上から床に転げ落ちた。

痛みのあまり動けないでいると、ひたきが「あっ」と小さく声を漏らした。どうやら俺を蹴り飛ばしてようやく目が覚めたらしい。


「ああっ、ごめんなさい!」


さすが寝ぼけていても狙いは正確で、しっかり急所へクリティカルヒットしていた。しかも、寝起きで訳が分からずイラついてもいたため、一切加減もなし。そりゃあもう、半端な威力ではなかった。


「いや、俺も寝てるのに飛びついたりして悪かったよ」

「ボス……」


何とかへらへら笑ってみせるが、ひたきは自分が蹴りを入れた箇所を気にしていた。ぺたぺたと俺の腹に手を這わせ、俺の反応を見ていった。


「お怪我は無いようですね」

「そうか」

「あの痛がり方からして、肋骨でもやってしまったのかと思いましたが」


あの蹴りを喰らっておいて何ともないとは、ある意味俺もすごい。


「……本当によかったです」


ところで、ひたきの安堵して緩んだ表情がとても可愛かった。さっきの続きではないが、俺の気持ちはまた盛り上がり、ひたきに手を伸ばしていた。ひたきを膝の上に乗せて抱え、ぎゅっと抱き締める。


「なあひたき、このあと……」

「駄目ですよ」

「さっき言ってた話もちゃんと聞くから」

「んっ……駄目ですってば、ボス!」

「"ディーノ"、だろ?」











「待て」は一度まで


「ボスの気持ちは分かりますけど、もうちょっと俺達のことも考えて欲しいですよね」

「大丈夫だ、我慢してりゃその内ひたきが躾るさ」

「ボス………」



あきゅろす。
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