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■HxH■
2月


キルアがいない。
嫌な予感がした。

朝 目が覚めて彼がいないことなんて よくあることだった。
一人で朝食に行ってしまうこともあったし 風呂に入っていたり 散歩に行っていることだってあった。

だけど その日はなぜか
体の熱が冷めていくような
心臓だけが強く脈打つような
そんな 嫌な予感がした。

「……キルア?」
小さく呼んでみた。
返事はどこからもない。
素足のまま 床に立ち上がる。
見渡しても 置き手紙らしきものは どこにもない。
だけど『ソレ』に気付いて 嫌な予感はさらに増した。

…キルアの荷物が一つもない……。
どうして。
昨日までは確かにそこにあったはずなのに……!!

部屋の外に飛び出そうとして ドアに体当たりしてから 携帯の存在を思い出した。
テーブルの上にあるそれを慌てて手に取って 震えそうな指でボタンを押した。

『おかけになった電話は現在使われておりません』

血の気が引いた。キルアがいない。
指は意識せずとも動いていた。

「もしも―し」
「ビスケ?キルア知らない?!」
「きるあ〜?知らないわよ。何 どうかしたわけ?」

ビスケの質問に答える間もなく電話を切った。

「もしもし」
「クラピカ? キルア知らない?!」
「……いや 知らないが。何かあったのか」

切った。

「もしもし!こちらハンサムなお兄さま レオ」
「レオリオ キルア知らない?!」
「無視かよ。知らねぇが どうかしたのか?」

切った。

キルアがいない。
泣き出しそうだ。大声で名前を呼びそうだ。

どうしよう。
どうしたらいい。
キルア どこ?

胸が苦しくて その場にうずくまる。
落ち着け。
考えろ。
何か思い当たる節はないか。
……………ない。

ケンカはしてない。
むしろ昨日のキルアはとても優しかった。
………優しかった。

『ゴンなら大丈夫だよ』

……まさか。

昨日 眠る前に二人で話したことを思い出す。
彼の言葉一つ一つが頭の中に響く。

『もしも 離れ離れになったら 俺達どうなんのかな』
『ハハ。マジになんなって』
『ま。もし俺が死んでもさ ゴンなら大丈夫だよ』
『だから もしもの話だっつってんだろ?』
『お前なら そんな悲しみだって乗り越えられる』
『なんだよ その顔。心配すんなって』

『俺はどこにも、行かね―から』


信じなきゃ。
どこにも行かないって言ってたんだから。
……信じるからね。


それから二週間後の昼。
ネテロ会長から電話が入った。

ゾルディック家の総主が、キルア=ゾルディックになったということを知らされた。

どうして。それしか言葉が出なかった。

何も告げず?
何も残さずに?
…どうして?



「―…オレが連れ戻します」

「……分かってる。強くなるから」

「強くなって キルアを連れ戻します」

「だから…お願いします……仕事を下さい……!!」


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■悲しくて苦しくて悔しくて仕方ないけど
連れ戻して 一発ぶん殴って 許してあげたい。
それがゴンちゃんなんじゃないかなって

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あきゅろす。
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