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■HxH■
正夢


譲れないものが一つだけあったんだ。


大抵のことは状況に応じて妥協してきた。
これが現実ってやつだと、受け入れてきた。


それでも譲れないものが一つだけあったんだ。
それはすごく大切で 暖かくて
触れると魂が震えるような
『光』だった気がする。

今はもうこの手にないけれど……。


俺は一体どんな顔でそれを手放そうとしているのだろう。
お得意のポーカーフェイスを駆使してるつもりだけど
俺はきちんと笑えてるのだろうか。

あぁ…
ここはいつか見た夢の中。
ただ落ちていく体。
助けを求める気力も尽きて。

この体はなんて重いんだ。
罪ばかり飲み込んで。愛ばかり注ぎかけて。
このまま墜ちていけばいい。
何も考えなくていい。

あの光はきっと、俺がいなくても輝きを失いはしない。

だから……大丈夫。
このままあの光りを忘れていこう。

微かに残った心でそう決意して 眼を塞いだ。
それなのに

「――――キルア!!」

愛しすぎるその声が聞こえる。
切迫した声。

あぁ 分かってる。約束してくれたよな。一緒にいるって……。
でも…一度壊れてしまった『この身体』は決して元には戻らないんだよ。

やっぱり譲れないものが一つだけ、確かに存在していたんだ。
それはこの心にいつだって熱を与えてくれた。

あぁ…一緒に連れていきたい。離れたくない。

また熱い感情が生まれてしまう。

神様。
もう一度あの光を見せて。
ホントはこんな終り方嫌だけど
もっとずっとこいつと歩いていきたいけど

そんな我儘言わないから

どうか
言葉を紡がせて。
名前を呼ばせて。


「ゴン…」

この名前の余韻だけ連れて
俺は空に墜ちる。



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あきゅろす。
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