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Novel
Dolls

※Janne Da Arc
「Dolls」より



Lost a day…

Lost a love…




【Dolls】




海は夕日でオレンジ色をしていて砂は黒っぽく、なんとも綺麗で寂しい海岸


そこに独りでただたたずんでいた



波の音が煩いくらい響いていて、昔を蘇らせた



【黄昏と柔らかな波があの日を連れてくる】


それはちょうど二年前の今頃で



その頃は立海大附属中学校に通っていてテニス部副部長をしていた

毎日テニス三昧で(まぁそれは高校進学した今も変わったものではないが)時間が過ぎるのが酷な程に早かった。



そんな中、当時付き合っていた人が一人だけいる

一生愛すと誓った相手だ。


名前を 幸村精市 と言う


「彼」だ

俺が愛したのは紛れも無い男だった。

若かったあの頃はなりふり構わず、ただお互い側に居たい一心で付き合っていた


幸村を愛した事が間違っていたと悔いた事は一度も無い。


だがそれはお互いの事を、先の事を、しっかりと考えては居なかったと自分を恨めしく思った事なら幾度もある


愛しているなら

しっかりと将来を見据えて

最初からこの気持ちを押し殺すべきだったんじゃないかと


今はそんな風に思える。



だからあの時もそう思い、そうしたんだと。



当時、卒業間近にした俺達はもう冬休みで

幸村に「たまには海でも行かないか」と持ち掛けた


幸村は嬉しそうに微笑んでくれた。



そしてふたりで来たこの海で、俺はこんなにも愛していた幸村を フった 。


「別れてくれないか?」


「……真田?」

砂浜に自分らの名前を指で書いていた幸村が目を大きく開いてその指を止めた


「俺達は別の高校が決まっている。また新しい場所で、新しい気持ちで入学したいんだ。分かってくれ」

「俺は…そんな風には…」

「俺はお前をもう好いてはない」



酷い言葉だった

そんな事、微塵も思った事などないというのに


「そもそも、俺達は男同士だ。これまでが間違っていただけだ」



鳴呼、そんな顔をしないでくれ

出来れば俺を恨んでくれ


「俺はまだ真田が…」
「すまない。」

「うそ…嘘だろ?なぁ真田…?なんか言えよ…!!」


俺の肩を掴んだ幸村の手も振り払えず、ただ顔を背けている事しか出来なかった

【「私じゃだめなの?」
「もう好きじゃないの?」


強い君が震えてた


「二度と会えないの?」
「何も言わないの?」

君は涙こらえながら


「何処も行かないで」
「独りにしないで」


しがみついて君が泣きいた

君を見れなくて
息も出来なくて】




「申し訳ない…幸村…」

「嫌だ…嫌だよ真田…あんなに好きって言ってたのに…」




あぁ忘れもしない。
幸村と過ごした日々

毎日のように好きだと伝えた

毎日のようにお互いの温もりを確かめ合っていた


抱き締めて、キスをするとお前は照れたように笑うから

もう離すまいと強く抱いた



それほど、それほどに


大切だったんだ幸村…お前の事が…



【忘れない
君を抱き締めたら
細やかな愛を感じた
キスのとき照れて笑うから
強くもう一度抱き締めた】


だからこそこの選択をした。

このままこの関係を続けて居たのではお前の将来が開けない

お前の遺伝子を世に残していくことが出来ない


こうするしかなかったんだ…



「わかったよ…」
「…!」
「真田がそう言うなら…仕方ない」
「幸村…」
「でも俺の気持ちは変わらないずっと…だから…」
「…だから?」

「だからそれでお前が幸せになれるなら…俺はそれでいい。」



涙を頬に伝わせたままいつもより弱々しく微笑んだ幸村を抱いた

見られない様に必死に自分の涙を隠しながら

初めて悲しいキスをした…。



「さよなら…弦一郎…」
「あぁ…」



【「立ち止まらないで」
「振り返らないで」
泣きながら君が笑った

砂浜に書いた二人の名前は静かに波にさらわれた

動けないまま声にならないよ

そして僕には今何が出来るのだろう?】





















あれから二年、俺は今も変わらずして幸村を想い生きていた


何度もあの日の夢を見て
何度も涙を流し
何度も幸村を呼んだ



「今…何をしている?…幸村……」


「海をみてた」


「…!!!!!?????」


「久し振りだね。真田っ」


ずっと恋い焦がれた相手がそこに立って居た

何故?

俺は遂に幻覚まで見るようになってしまったのか?


「俺もこの海がみたくなってね。真田も?」

何も変わらない
海に溶け込んでしまいそうな優しい声
美しい程の笑顔


「泣いてる?」
「…!」


「そんなわけないか。ハハッ」


幸村…


「幸村…」

「俺はね、」
「…」
「俺は幸せだよ」


それは何処と無く寂しい言葉だった


「また真田に逢えて幸せだ。」

「何を…言っているんだ。もう…」

もう俺など忘れられているかと…


「言っただろ?ずっと好きだって。今も変わらないよ。すきすきすき大好きだ」
「…」

「ごめん。でもだから此処に来たんだよ。忘れないように」


俺は…本当にあれで良かったのか…?

本当に幸村の幸せのために…なっていたのか?

間違っていたのは


俺か…?


「幸村…俺は…」


「やり直さないか?」

「…!?」


「嫌ならいいけどね」

「たるんどる…」




嗚呼 こんなことならもっと

もっと早く…

お前を連れさらえば良かった…



「苦労…かける」
「幸村…愛している…幸村……」


二年振りに抱いた幸村はやはり少しも変わってなどいなく、温くて…少しか細くて


「キスしてよ。弦一郎」


泣きながら数秒のキスをした




「あ!」
「…?」



幸村は急にしゃがんで何かをし始めた


「…ね。」


そこの砂浜には二人の名前が書かれていた


「本当に変わらん奴だ」


この文字が一生消えなければいいのになどと思った…。


もう離すまい
もう後悔しまい

愛している


愛している
変わらずずっと


来年はまたふたりで

この海を眺めたい。







Return a day…

Return a love…



・END




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