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Novel
握力Sなのに


幾度あの月に願えば


俺の願いは叶うのかな…?





【握力Sなのに】




-某日

部活が終わり、他の部員が全員帰った部室にて


真田と二人で少し残って日誌をつけていた時の事。


(まぁ書いていたのは真田だけど)




「俺さ…」

急に話出した俺を不思議そうに顔をあげて見た



「小学生の時 犬が欲しかったんだ。大きいのでも小さいのでも良かったんだけど…。でも親に言ったら反対された。面倒みきれないでしょ?ってね」


「…ほう?」


「中学一年のときは限定のシューズがどうしても欲しかったんだ。そのために貯金してたんだけど目標額を達成した時にはもう在庫切れだった」


「…うむ。……何が言いたい?」



「要するにその都度、本当に欲しいものはいつも手に入らなかったって事」




今だってほら、こんなに近くにいるお前は何処か遠くて


掴めそうで掴めない。

「悔しいよな…って思ってさ」



なんとなしに窓越しから冬空をみたら吸い込まれそうになった
あまりに月が綺麗過ぎて。


「真田の一番欲しいものって…何?」


このテニス以外の事には無欲そうな男の望みなんて見当もつかない。



「いきなり言われると分からんものだな…。そう言う幸村は今は何が欲しいんだ?」



「…魔力かな。」



…いや、真面目に。


「……???」


そんな困った顔されても。


「またおかしな事を言うんだな」


飽きれた様に俺から目線を外して再び日誌に落とした




「まぁ真田には分からないだろうね。…欲しいなぁ〜魔力…」




だってもし、俺に魔法が使えたら

お前の望みをなんだって叶えてやれるし、真田の心なんて指ひとふりで奪ってやれるのに



俺の気持ちになんてこれっぽっちも気付いてないんだから


嫌んなるよ 本当に。






そしてまた空に浮かぶ月を見て

もし、あの月が掴めたら、君は俺のものになってくれるだろうか?なんて考えてみた



「幸村」

「…?」

「綺麗な月だ。」


「…あぁ、そうだな」






お前は月でなく俺を見ていて なんて言えるはずもなく。




君の横顔を眺めてた


側に居れるだけで幸せなのかななんて、思ったりして



俺にしては随分と珍しい事を思わせてくれる真田は凄い。




あぁ本当に…





「好きだ…」



















「…え?」




そう 呟いたのは真田の方だった。







「あ…否、すまない。気にしないでくれ」
「俺の…」
「…?」

「俺の方が好きだよ」

「幸村…」
「俺ってもう魔法使いだったみたい」



震えた身体を窓縁で支えて、ハハッと笑ってみせた


真田も日誌を閉じてフッと笑ってくれて


「そろそろ帰るか」
「そうだね…」


まだ腰抜けた状態なんだけど…

困ったものだな。




そして真田は自分のテニスバッグと俺のも一緒に持ってくれて


「さぁ、行くぞ」


俺には目線を合わせずに左手を差し出した


「…あぁ」


それを右手でしっかりと握って


もう離してやるもんか と誓ったんだ



その帰り道、もう月なんてどうでも良くなってた。


だって欲しいものはもう今は俺の手中に。




・Happy end





(オマケ)



「ん゛〜」
「どうした幸村?」
「あの捨てられた自転車を消してみようかと思って」
「マジックじゃあるまいし…」
「俺は魔法使いだ!だから真田が手に入ったんだ!」
「な…///」
「だろ?」
「魔法などなくとも俺はお前が…その…」
「そうか…わかったぞ」
「…?」
「魔法じゃなくて俺の美貌勝ちか…残念」
「…そうかι」



終われw




あきゅろす。
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