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Novel
雨と君と俺の細やかな賭け事。


湿気が増して行くのがわかるようになったんだ


きっと、それが待遠しいからなんだと思うよ

早く、早く降ればいいのに…






『雨と君と俺の細やかな賭け事。』








雨が降る。
そうすると部活は必然的に早く終わるか、無しになる


結果、君と居る時間が増えて




「明日は晴れだよ」


そんな言葉が憎くもなる。



「晴れは嫌い?」

「そんな事は…ないですよ。」



昼食を運んで来てくれた看護士さんとの何となくの会話…。



天気予報を見ても、少しでも降水確率が高いものを探してる自分は本当に愚かだと思う


昔はそんなこと全くなかったのに…



「でも明後日は雨になるらしいよ。嬉しい?」


「本当…!?」


その反応はあからさまに「嬉しい」と言ってるみたいだった



「多分ね!神様の気持ち次第だね」



神様なんて捻り潰して俺が神様になりたい。

そしたら毎日酷い雨にしてやる


……それより病気を治せばいいのか…。



「ちゃんと薬飲んでね。」

「はい」



看護士さんはフッと笑って部屋から出て行った




「早く降ればいいのに…」


そうポツリと呟き、窓の外を恨めしそうに睨んだ。









翌日、天気予報道理にカラッと晴れた


起きた瞬間、舌打ちしてしまったのは内緒。



晴れの日は大体、真田は夜に来てくれた

忙しいときは電話だけだったりもした。



電話だけのときは少し腹が立って泣きたくなった。



今日は会いに来てくれるだろうか?
そう毎日毎日考えて、賭けてみる


勿論、来る方に。





「幸村くん、電話きてるよ。真田くんから」


そして今日は賭けに負けた。



「…今行きます」



重い足取りで公衆電話の前まで足を引きずった





「もしもし」

「幸村か?すまない…今日はいつもより練習が長引いたのでな…行けそうにない」


「うん。お疲れ様。…………なんて言うか馬鹿。死ね。嫌いだ。いますぐ走って来いよ?5分以内で」


「………すまない」

「わかった…おやすみ。」



-ガチャッ




賭けに負けた苛々と悔しさと悲しさと…

会いたい気持ちがグルグルしてつい一方的に切ってしまった



こんなときにいつも思う

「俺とテニスどっちが大事…?」


そんな馬鹿げたことを。


俺って言ったら嬉しいけど怒る
テニスって言ったら悔しいけど納得してやる

こんな質問…本当に馬鹿げてるんだ。分かっているよ


でも一瞬でも過ぎってしまうんだ


そしてこれも病気のせいにして(脳に筋肉ってあったっけ?)



「はぁ…」

深く吐いた溜め息が広い廊下に響いた


そして重い足を無理矢理動かした

何故か病室への道が行きよりも長く長く感じた。




「明日こそ勝ってやるっ…」



そう、明日は待ちに待った雨の日…。


本当に降ってくれれば大逆転だ






そして俺は明日に備えて早く寝る事にした

















翌日、俺は見事 勝った。




「やったっ…!」


朝からザーザー降る雨に小さく拳を握った



あとは君を待つだけ



君が来るまでの時間、ずっと窓に吹き付ける雨を見てワクワクしていた


今日は何を話そうかとか俺の顔色悪くないかなとか

まだかなぁ まだかなぁってずっと…。









そしてやっともうそろそろ来てもいい時間になった






-コンコンッ


来た…!!!!!


「ゆ…幸村先輩…」

ドアからヒョコッと顔を出したのは何度か声をかけられた事のあるうちの学校の女子数名で…


「あの…幸村先輩が入院したってきいt「うん。わかったから…帰ってくれるかな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????」


「「「…!!」」」


「…チッ……」


「すいませんでした…」



最初に喋った一人は半泣きで、あとはその子を追いかけるように帰って言った。



泣くな。俺のトキメキを返せ。同情なんてしてやらないから…!



「……?アレはどうしたのだ幸村…」

「…真田っ!!!」



待ちわびていた相手の急なお出ましに少し浮いた。



「何かあったのか?泣いてた様だが…」


「知らない!悪いのはお前だよ真田!俺はお前以外なんか待ってなかったのに…!!!」



ちっとも減らないのが減らず口。


そして一日中ずっと温存していた体力をフルに使って真田に飛び付いた


土砂降りの中歩いてきたせいか、真田は肩も足もともビショビショになっていた



「本当にどうしたんだ幸村?///」


「黙って。俺を負けさせたんだからその罪を償えよ」



腕を肩に回し、触れるだけのキスをして



「…逢いたかったんだ」


二回目は溶け込むようなキスを。




「…だが一昨日会ったばかりだろう?」

「毎日逢わなきゃ意味がないんだ!それに晴れの日は時間が短い。」



フッと笑った真田の目線の先は俺じゃなく、


窓辺に逆向きに吊された不格好な照る照る坊主。



「そうだな…。俺も雨が好きになったな」


「俺のほうが真田を想ってるよ!」

「話が違くないか…?」

「同じ事だよ」


鳴呼、どうかこのまま降り止まないで

キラキラした雨粒のなかでずっと君と居たいんだ…


「好きだよ弦一郎…。」

「…あぁ。俺もだ」



三度目の口付けは、もう離さないようにと最大の愛を込めて。






・END




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