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スターチス




銀色のさらさらな髪。

透き通った翡翠色の綺麗な瞳。



ずっと傍で見ていたそれは


すごく眩しくて。
すごく温かくて。



大好きだった。



だけど、

もう間近で見ることは叶わなくて。




悲しいよ、



何度も涙を流した。









昼休み。

美化委員の私は幸村先輩と一緒に
校庭の花壇の手入れをしていた。


「少し花に元気がないですね」


顎に手をあて、真剣に考え事をする幸村先輩。


「栄養剤をとってくるよ」


待っていてくれと言葉を付け加え
颯爽とその場を後にした。



本当に熱心だなぁ


て、感心している場合じゃないか
私も何か出来ること探さなきゃ


そう意気込んで辺りを見回す。



ふと目に留まったもの。



花壇より少し離れた校舎の隅。
小さな花びらを懸命に広げて咲く
一輪の白い花。


誰の目に留まることなく
ひっそりと咲く存在に。




貴方は気づいたんだ。







『あの花、強いのう』


白い花を見ながら、貴方はそう呟いた。


『どうして?』

『栄養もない土で、日も当たらん場所で。誰かに見られるわけでもなく、ひっそりと咲いとる』


確かに
私も今日、初めてあの花の存在に気がついた。


『それでも負けんと花を咲かせ続ける。凄いことじゃと思う』


その花にゆっくりと近づいて。


『お前さんは立派じゃのう』


そう呟き穏やかに笑う。



優しくて慈しむようなその笑みを。
すごく綺麗だと思った。









「綺麗な花だね」



後ろから声がしてハッとする。


「そうですね」



いけない、つい思い出に浸ってしまった。



「ひっそりと。だけど力強い。懸命に生きてる」


ゆっくりとした足取りで白い花に近づく先輩を目で追う。



「華美な花よりもずっと綺麗だと思う」


目の前まで辿り着くと、先輩はそっと腰を下ろして、その花を見つめる。


あ…


彼と同じ、慈しむような笑み。





少しだけ胸が痛くなった。




「私もそう思います」




その言葉に少し驚いた様子の先輩だったけど。


「名前ちゃんにそう言ってもらえると嬉しいな」

と、いつものように優しく微笑んだ。




きっかけは貴方だけど。


心の底からそう思える。




綺麗で。強くて。

この花のように自分もなれたらって。




考えたら胸がまた痛くなった。





「…本当なら」


一呼吸置いて。


「花壇に移し替えてあげたいところだけど」


私の表情を窺うように。



「止めておいた方が良さそうだ」
「え?」



その言葉の意味を聞くより先に
先輩は私に背を向けて。

持ってきた栄養剤のひとつを
白い花の近くにそっと差す。




「俺がずっと見ててあげるから」




優しい手つきで、そっと花びらを撫でながら。




「だから、安心して」



そう呟いた。







どうしてだろう


花に言っている筈なのに




何故か私に言っているように聞こえて


胸が苦しくなる






痛みを増す胸を押さえながら、




「ありがとうございます」



と呟いた。





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