[携帯モード] [URL送信]
48:うさぎさんだぴょん

 教室がえっちワードに包まれたタイミングで、シャーーっと勢いよくドアがスライドしレンレンが登場する。王貴君との深い事情を知っているせいか、レンレンから前とは違ったいやらしさを感じた。啓太から「しゅ、しゅごい」と呂律を失ったつぶやきが漏れ出す。


「あれ?」

 おしどり登校かと思いきや、レンレンの後に続くはずの王貴君の姿はない。受け身の方が元気に登校って普通は逆じゃない? 俺と目が合ったレンレンも「あれ?」っと不思議そうな顔をした。


「王貴の席になんでお前がいるんだよ」

 愛する人と結ばれた余裕なのか、俺に対してトゲトゲしていた態度が、ゴム製品の大人の玩具のツブツブ程度に軽減されている。


「空いてたからだぴょん」

 うさぎさんだぴょん。


「はぁ? 俺より先に出たのに―――っどういうことだ!?」
「えっえっ、僕たち予鈴前には教室にいましたが、王貴君とは会っていませんよ!?」

 まったくもって啓太の言う通り。


「王貴は午後の授業に出るって、部屋で飯食って出て行ったんだよ。俺には休んでるように言ったけど、平気だったから……」

 お昼ご飯を部屋で食べた王貴君は、おそらくお昼休み中に寮から校舎に移動した。だが教室に現れていないということは。


「……ベンチで昼寝?」
「んなはずねぇだろ!!」

 こっわ、レンレンに怒鳴られた。ぶっ叩かれるほどの勢いだった。ツブツブからトゲトゲに逆戻り。


「くっそ、出ねぇ」

 林檎ちゃんに怒鳴りつつ、レンレンは王貴君と連絡を取ろうとしていた。


「高瀬、委員長に報告した。風紀に行こう」
「待ってられるか! 自分で探す」
「おい!」

 B組の風紀委員かな? の言葉を無視して、レンレンは教室から出て行ってしまう。


「もしかして王貴君ってピンチ系!?」
「林檎たんやっとですか!?」

 啓太にどへ〜っとあきれられた。


「だって会長様と会計様がラブラブな話題と、王貴君は無関係じゃん」

 ミル貝のケータを靴箱inされた事件だって、被害者は俺とユニちゃん先輩だったし。


「会長様と会計様以外の人気者とも、王貴君は仲がいいですから。この隙に狙われたんだと思います」
「そーいやそうだった」

 うんうん、友達になってからすっぽり忘れてたけど、王貴君ってモテモテ転入生だった。生徒会にはまだ副会長たちもいるし、風紀委員ともつながりがあって、レンレンだってファンがいるだろうし。


「王道主人公をなめていました。脇役や非王道、全ては王道があったからこそ! 王貴君のピンチを見抜けなかったとは……捜しに、いやでも、うぅぅ無力だぁ」

 前半何を言ってるかサッパリンゴだが、最後の無力という言葉に共感する。レンレンみたいに飛び出して、走り回れば見つけられるのだろうか。


「王貴君って強いんだよね、チームがなんたらって、悪の組織と関わってるみたいだし」
「しっ! しっですよ林檎ちゃん」
「むぅ??」

 大胆なことに啓太は俺の唇をつまんで、アヒルさんに仕立て上げる。口は普通にふさいでほしい。


「学園では族のこと、皆さん隠していますから」
「……ほう」

 チームって族のことだったのか、族ってアレだよなあのアレだよな。ぼんやりなら分かる。しかし「皆さん」ってなんだよ、たくさんいるっぽいじゃん。確か王貴君が亜理ちゃんは入ってないって言ってたよな、ジュンジュン先輩に風紀委員会室に連れていかれたとき。



[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!