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 体育の先生にF組は靴下が派手! と体育祭当日は地味なのを履くように注意されるところから授業は始まった。アルバムや大丈夫そうなところを集めた映像を、保護者向けに作るからね。うちのお父さんとお母さんは、なんにも気にしないと思うけどぉ。


「うそ!? F組は全員蛍光オレンジのハイソックスって決めてたのに! 横暴だっ!」
「決まってない決まってない。横暴なのはお前だ! ったく、何履かせる気だよ」
「まだ通販してなくてよかったぜ」

 整列してる前の方から、まーくんと誰かの会話が。蛍光オレンジって目立つなぁ。
 初等部の子たちは、カラフルな靴下や運動靴だったっけ。あれは保護者が自分の子供を見つけやすいように履かせたのかな? 高等部は運動靴、指定の白いのがあるからね。


「F組の実行委員は二人ともリレーの選手で、放送部と新聞部は活動もあるだろ。B組を中心にするように」
「心配しないでください、俺やれますコーチ!」
「誰がコーチだ!」

 まーくん張り切ってるなぁ。B組は物静かなクラスっぽいし、F組がガンガン盛り上げるのは大事だよ。
 先生はまーくんとアユくんが普通よりちょっと? 元気すぎるのを知っているから、B組が押さえるように指示を出しているんだけど、ぶっちゃけ余計なお世話。「はぁ?」って思ったのは俺だけじゃなかったと思う、まーくんが気を利かせてボケたの分からないかなぁ。





 授業の半分は自由時間になった。アユくんは壁にもたれて目を閉じている。その隣では王子くんが、バスケットボールをこねこね。

 ……そして太陽くんは、まーくんに捕獲された。


「さぁさぁお楽しみの時間ですよ〜」
「ひぃぃ」

 楽しみにしてないから! ずるずると暗そうなステージ裏へ連れて行かれる。怖い話するの? 都市伝説なの? どっちなの!?


「一名様ごあんな〜い」
「どこココ、なにココ!?」
「はいはい、びびってる太陽系は学園一強い男のお膝に乗ろうね」
「えっゆーごくん? 茜くんも?」

 ステージ裏にある小さな箱みたいな部屋、中には放送用の機械がある。なるほど、体育館用の放送室かぁ。施錠されてなかったのかな? まーくん放送部だから開けられるとか?


「……ひざ」

 ゆーごくんが険しい顔で、まーくんの冗談に戸惑わされているよ。いや、まーくんは本気で言ってるかも。


「乗らないから安心して〜」

 壁に立てかけてあるパイプ椅子を、パカって開けてまーくんにあげる。俺のはっと、もう椅子ないや。せまい部屋だからなぁ。


「太陽くん、こっち」
「ええ!?」

 まさかのゆーご君本人に、膝に乗るよう言われるのかと思った。紳士的に席をゆずってくれただけでした。


「ほら」
「わーありがとう」
「いいえ」

 当然。といった態度のゆーごくん。彼の厚意(こうい)は受け取りたいよね、すっごく嬉しそうにされるから。
 これはこれでいいのか、まーくんの表情はキラキラ。


「てか、里見呼ぶよう頼んだのに……」

 茜くんは納得がいかないぞって顔で、隣に座った俺のことを見る。知らない知らない、人違いなのはまーくんのミスだもん。


「雄吾を連れてこいって条件、意味不明だと思ったけど、丸山も来てるし何でだよ?」
「それは太陽系と風紀委員長を、密室で二人っきりにするために決まってるだろ!! 空気を読め、お邪魔虫は退散するぞ」

 そら行くぞって、まーくんは茜くんにジェスチャーする。展開が急すぎ!?


「えーっと、アユくんは調子悪いみたいだからぁ」

 まーくんの優しさなんだよね、いくら大好きな茜くん相手でも、今日はちょっと日が悪い。


「だから、俺のせいで、だし……」
「ふぁっ!?」

 まさかの茜くんが原因。


「歩真の地雷ふんだみたいだな」
「まーくん知ってたんだ」
「朝イチでふわっと教えてもらった」

 一番仲良しなまーくんには、元気出ない理由話してたのか。


「もう謝ったんだろ」
「でも」
「んで、また謝りたいんだ? どうせ歩真は簡単に九條を許すじゃん。俺そんなの嫌だから」
「…………」

 まーくんの声のトーンがいつもより低い。
 アユくんの地雷が何かは知らないけど、まーくんの怒ってる様子からして、あきらかにふんじゃダメって分かるのに、ずかずか進入してやらかしたんじゃないかな?


「あいつノリが軽いから、マジうっかりした。俺も自分が許せないし、許してもらえなくていい。落ち込み方やばかったから心配で……」
「……ふーん」

 なんだかかっこいいなぁって、茜くんのこと思ってしまった。まーくんも同じなのか、口元がにやにやしそうで仕方がなさそう。我慢してけいれんしちゃってる。


「話したいなら、歩真が気持ち切り替えてからにしろよ」
「安堂?」
「そしたら歩真も、九條に不満言うだろうし」
「そっか、ありがとな」

 なるほど、口だけで謝った許したってなっても、気まずさは残ったままになるよね。今はタイミングが悪いんだ。


「さて俺と九條が二人でいたら、プ○キュア疑惑が浮上するし別々に戻るぞ」
「してたまるか!」

 まーくんてイケメン願望ないのかな? やたら自分のキュートな顔を推してくる。確かにまーくんも茜くんも、ふりふりスカート着こなせそうだけど。


「えっ!? 俺とゆーごくんを残すの本気なんだ」
「もっちりもちもち☆」

 うううん? たぶん「もちろん」の最上級な言い方なんだと思う。茜くんも賛成みたいで「先に行くから」ってあっさり出て行ってしまった。


「では、あとは若いお二人で」

 オホホホホと謎な笑い方をしながら、まーくんも行ってしまった……。というか、みんな同い年だけど??



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