「あの…リドル先生」
「………なんだ?」
すっかり通い慣れたリドル先生の部屋。今日も出された課題の質問をしながら内容を纏めている。
先生は先生で、相変わらず毎日分厚い難しそうな本を読んでいた。
「関係ない話なんですけど…」
「課題は終わったのか?関係ない話をする暇があるようには見えんが…?」
「いや、どうしても聞きたくて…!!」
"どっちにしろ無駄話をするんだな"とリドル先生は溜め息を付くと、私に何を聞きたいのかと問う。
「リドル先生はどうして教員席で食事をとっているんですか?個人で食べることも可能ですよね?」
リドル先生が教員席で食事をするのは、はっきり言って意外だった。スネイプ先生やダンブルドア校長先生と、リドル先生が話しているのは見かけたことがあるが、他の先生と話している所を見たことがない。
スリザリンの寮長だし、仲良くないのだろうと予想出来たが、それなら何故わざわざ教員席で食事をしているのだろうか。
確か、望むのなら個人部屋で食事をすることも可能な筈だが。
「私が皆と食事をするのが、そんなにおかしいか?」
「おかしくはないです…只、意外で」
「そうだな…個人で食事をするのも確かに悪くなかったが……」
そこで先生は言葉を切ると、小さく笑う。その笑みが自虐的に見えて、愚かな私は漸くその話題が不味いものだったと気が付いた。
「私には家族が居ないから…皆で煩く食べる食事が新鮮だったのだ。家族が居たらこうだったのかと考えたら…な」
頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。とんでもない話題を引き当ててしまった。
今まで私は、リドル先生の余裕な表情しか見たことがない。しかし今はどうか。私のせいで先生はこんなにも、辛そうな――
「お、おい…どうしたんだ」
「リ…ドル先生……ごめんなさい。私、私…失礼なこと聞いて…っ」
「…同情は要らない。だから泣くな」
同情ではないのだ。恋をした相手を傷付けてしまったことがショック過ぎた。
しかし、涙が零れるだけでフォロー出来るような言葉は出てこなかった。
私が、先生の家族になりたいです…!!
苦し紛れにそう言えば、「こんな出来の悪い家族は要らない」と言われた。
でも、そっと頭を撫でてくれる手が優しくて。優し過ぎて、私は本当にリドル先生の家族となって、今度は先生を抱き締めたいと思った。
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