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観覧車のあれこれ
 

「観覧車の一番上でキスするとなんなんだっけ」
 海上を通る電車に揺られながら、彼が不意に言った。
 平日の夜遅く、客席にはほとんど人が居ない。視線の先にはゆっくりと虹色に光る観覧車。綺麗で、それでいてどこか遠く、現実離れした世界のように見える。
「…なんでしたっけ、それ」
「うん。何だっけ」
 本気で思い出す気も無いような調子で、僕と彼は後ろに流れてビルの陰に隠れてゆく虹色の観覧車をみつめる。
「何かいいことあるんだったかなあ」
「ていうかデートで観覧車が既にいいことなんじゃないですか」
 観覧車がビルにすっかり隠れてしまったので視線を戻すと、彼とぱちりと目が合った。
「行こうか、観覧車デート」
 言うと思った。
「…受けて立ちますよ」
「おや、挑戦的だな」
「嘘ですデート行きたいです」
「よろしい」






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