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ドーナツがあれば、
 

「まだ怒ってんの」
 怒ってませんよ、と答えた声がいつもより低い。
 怒ってんじゃん、とは言えずに冷めつつあるコーヒーカップを持て余す。
 ひとりがふたりになると、往々にしてありがちな、なんだったかわからない些細な食い違いがまだにやにや笑ってこっちを見ている。
 ふと、思いついて席を立った。
 途端に、不安と不信が混ざり合った視線があとを追ってくる。
 レジから戻る間も、ずっとこっちを見ているのがまるで大きな犬みたいで、本当に、ここが時々立ち寄るドーナツ屋じゃなかったらぎゅうぎゅう抱き締めてやりたいくらいだ。
「……さっきごはん食べたばっかりですよ」
「俺もだよ。半分こ」
 一番シンプルなドーナツを、ぽくりと半分に分けて差し出す。
「…懐柔策ですか」
「まあ、そんなとこ」
「……もう…」
 甘い物が好きな事なんかもうとっくに知ってる。
「……おいしいです」
「うん」







ドーナツがあれば、キミのキゲンを直すのはとても簡単。
※ミスドのトレー紙広告より





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