CANDY
「全部、僕のなんでしょう? 言ったじゃないですか、この前。ぜんぶおまえのだから好きにしていい、って」
だから全部舐めさせて下さい。
――この前って、いつ。
そういえば言ったかもしれない、と思い出したのはひざまずいた彼が腰と下腹部の辺りを舐めたりかじったりしだした頃だった。
先々週くらいだ。確かに言った。
お互い切羽詰まった状況なのに、これ嫌じゃないですか平気ですかと怖々訊いてきて、一向に先に進まないからそう言った。言った途端に息を呑んで、本当ですか、と言われたから、本当だからはやく、と言った。
思い出してみれば、あの時もやけに首やら胸やら舐められた。
今回は舐める上に軽く噛んでくる。壁に寄りかかって立ったままの両足首を、逃がさないようするみたいに掴まれて、ちょっと興奮した。
今日は結構汗をかいたから先にシャワーを、と思っていたら、珍しく彼の方から誘われた。誘われたと言ってもそんなに直接的ではなかったけれど。
「っ、」
足の付け根に歯を立てられて、思わずびくっと震えてしまう。上を向く目と視線が合った。
考え事をなじるような明るい茶色の目が、いつになくはっきりと欲情していて、ぞわりと腰に重たい感覚が這う。やけに赤い唇が半勃起したそれをゆっくりくわえ込んで、もう目が離せない。
ぬめる舌を絡ませながらじりじりと唇から抜き出して、なんとなく名残惜しい様子で先端に舌を這わせた。
それから、とろりとした声で彼は言う。
「…しょっぱい」
ああもう。
好きにしていいからとは言ったけど。
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