12月下旬
自分と同じ男性と同じベッドで寝てこう言うのも変だけど、ゆうべは何もなかった。誓って、何もなかった。
二人で晩ご飯を作って、お酒を飲んだので、二人ともなんだかふわふわしながら日付が変わってもずるずる起きて、年末によくある感じの毒にも薬にもならない夜中のバラエティー番組を見たりしていた。不思議に思う事もなく、彼は僕の肩に少しもたれかかって、僕はアルコールが回ってあたたかい彼の体温が気持ち良いなあなんて思っていた。
でも誓って言う。ゆうべは何もなかった。
日付が変わってしばらくして、僕と彼は少しだけふらふらしながらベッドに潜り込んで電気を消した。他愛ない話を、僕らは声を潜めてした。ひそひそ囁いて、くすくす笑った。
彼の手が僕の手を確かめるように撫でていて、それがくすぐったかった僕は彼の手をそっと捕まえる。ふふ、と暗闇の中で笑った彼がごそごそ動いて僕にくっつく。
あ、スイッチ押しちゃったかな、と思ったけど、彼はそれ以上なにもしてこなかった。
「……なあ、いやじゃなかったらでいいんだけどさ」
僕の耳元で彼がひそひそ言う。
「なんですか?」
「……うでまくら、されたい」
少しだけ考えたあと(なにしろお酒飲んだしちょっと眠くて頭がなかなか働かない)、僕は無言で彼の――頭の下というか首の後ろ、枕との間に腕を差し込んだ。空いてる方の腕で彼を抱き寄せたのはちょっとやりすぎだった気もするけれど。
それから彼が僕の肩にすり寄ってくすくす笑うので、なんだか急にそうしたくなって、彼の額や頬や唇に何度かキスしたのも、ちょっとやりすぎだった気もするけれど。
とにかく僕と彼は、そうやって、なにもなく眠った。
目が覚めると、まだ眠っている彼が自分の腕の中にいて。
僕はなんだか、少しだけ、泣いてしまった。
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