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エメ博士とアルベルト
 


 私は雲一つ無い真昼の空を見上げた瞬間に天啓を受けた。
 それは間違い無く天啓だった。
 神が――神が居るなら、の話だが――その全知全能のみわざをほんの一かけ、私に零してくれたのだ。
 光あれ、と神は言った。だから光が生まれた。
 そう、神は私に言った。
 創造せよ、と。




「『他の命』だから弄ぶ事に異議が出る」
 エメ博士は膝の上に乗せたアルベルトを心の底からいつくしんでいる様子で、もうとっくに何もかもを知っているようなアルベルトの頬を優しく撫でていた。
「アルベルトは確かに、生命としては私とはまったく別物だ。だが、遺伝子上、アルベルトは私だ」
 滑稽、という言葉が不意に胸を過ぎった。他者を寄せ付けず、研究に没頭し、神を信じず、誰も愛さないし誰にも愛されない。そんな彼が、たった一つ、愛おしむものが「自分」とは。
「私が私を好きにして、なんの不都合がある? 無いだろう」
 エメ博士はアルベルトに頬ずりさえしそうな様子で目を細める。
「『私』には、」
 アルベルト少年は、満たされた子供の表情で、安心して博士の胸にもたれかかっていた。
「無限が永遠に続いているのだ、コンラッドくん」







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あきゅろす。
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