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遙かなるアルハンブラ 
 

「それじゃあひとつ」
 酔った喉とは思えない麗しい声で吟遊詩人は唄った。
 酒場はいつもの連中で賑わっていたが、その中にするりと溶け流れる歌物語にいつの間にか誰もが聞き入っている。
 この年中雪が降るような国ではまるで夢物語のような南国の砂の都。そのオアシスの王宮。
 竪琴も笛も持たない吟遊詩人だったが、なるほど、その声ひとつで充分だった。
 歌が終わると、彼のまわりを取り囲んだ連中がわあわあと彼を称賛し、空の杯に新しく酒を注ぐ。
 暖炉では赤々と薪がはぜ燃えて、脂の膜が張ったスープの中で豆と芋と肉がよく煮えていた。彼の目がふと、こちらを見る。
 青いはずのその瞳が、見たこともない砂漠の太陽のように金色に輝くのを、見た。



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