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ある物語のはじまりのふたり
 

 束ねていた濃い蜂蜜色の髪を解くと、女は男の膝を跨ぐようにベッドの端に膝で乗り上げた。エメラルドの瞳で値踏みするように男を見る。
 男の手のひらが細い腰を撫でると
「あたしに触った男はみんな不幸になるよ」
 女が微笑んで、眼下の黒髪に華奢な指を差し込んだ。
「俺は平気」
「どうして」
「俺は幸福を知らないから、不幸も知らないんだ」
「……本当に?」
 シャツを脱がせると、浅く日に焼けた逞しい上半身が露わになる。女は、その肩に、首にゆるやかに噛みついた。
「…きみは、幸福を知ってる?」
 女の肌はぞっとするほど滑らかで、甘い果物の香りがする。
 髪に差し込んだ指をずらして、薄い青のピアスが光る耳をくすぐり
「さあ。知らない」
 女は笑っている男の唇にやんわりと歯を立てた。



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あきゅろす。
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